ペットの病気・気になる症状

高齢者の麻酔

こんにちは

獣医師の中です。

 

 

 

現在院内は、

昨今の動物医療の現状を反映するかのように

高齢者の入院が多くなってきています。

 

本日も3件の高齢者が入院中であり、

その子たちには共通点があります。

 

それは、

 

「10歳以上であり、全身麻酔でなんらかの処置を行った」

 

ということです。

 

 

 

 

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17歳のひめちゃん

 

全身麻酔下で計1時間30分の外科手術を行いました。

 

 

 

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10歳のラブリくん

 

最初は元気がなかったので、麻酔なしで処置ができましたが、

このラブリくん、

元気になると本性が出てきてガブリくんへ大変身!

よって全身麻酔下でカテーテル導尿を行いました。

 

 

 

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15歳のモカちゃん

 

この中では最もハイリスクな麻酔でした。

全身麻酔下で内視鏡を行い、

胃瘻チューブを設置しました。

 

 

 

 

高齢者の全身麻酔は、

「代償機能の低下」をどう対処するか。

それが大きな課題となります。

 

 

ようするに、内臓機能に余力がない状態なのです。

安全範囲が狭いんですね。

 

 

それに対して、麻酔によってさらに負担をかけることで、

術中・術後に様々な悪影響をもたらす可能性があります。

 

 

 

逆に、状態をきちんと把握し、リスク対応すれば

そこまで想定外のことは起こらないと考えています。

 

 

2歳の子と、17歳の子で同じ麻酔をかけては

後者のほうがリスクが高いのは当たり前です。

 

 

 

 

「高齢だから」という理由だけでは

麻酔をかけれない理由にはなりません。

 

 

 

 

・・・しかし、どの子の麻酔も緊張しました。

僕の寿命はどんどん縮んでいってる気がします(苦)。

 

 

恐怖の『肝リピドーシス』

 

肥満は万病のもと

 

何人ものオーナー様にそう啓蒙してきました。

しかし最近、自分自身が太ってきており、

説得力がなくなってきております。

 

 

太ったネコちゃんは、ポッチャリしてかわいい。

 

で す が

 

肥満は様々な弊害をもたらします。

今回のお話、肝リピドーシスもそのひとつ…。

 

 

 

なんらかの原因によって

ゴハンを食べなくなったネコちゃん。

食べ物からエネルギーを摂れないため、

エネルギー源として全身の脂肪が肝臓に集められ、

その結果、

肝臓で分解される以上の脂肪が蓄積され脂肪肝になってしまいます。

つまりキャパ超えをした結果、フォアグラ白いキモになるのです。

Fatty liver, eps10

この病態を『肝リピドーシス』といいます。

 

こうなってしまうと、

肝臓は脂肪組織に邪魔され機能低下を引き起こし、

肌は黄色く変色(黄疸)して、

 

ますますゴハンを食べなくなる。

ますます肝臓に脂肪が溜まる。

ますます肝機能は低下する。

 

この悪循環の結果、肝硬変→肝不全となり死の転帰をたどります。

 

 

太ると、この肝リピドーシスになりやすくなります。

 

 

当院でも、重い病気にかかって食欲がなくなり、

肝リピドーシスになったネコちゃんたちが後を絶ちません。

 

 

治療法としては、

食欲低下の原因となっている病気→基礎疾患を治療するとともに、

これ以上の脂肪組織の蓄積を防ぐため、

一刻もはやく栄養バランスのとれた食事をとってもらうこと。

肝機能が残っていれば、脂肪組織は徐々に分解されていきます。

 

しかし

 

食欲のないネコちゃんはなかなかゴハンを食べてくれません。

そこで、我々獣医師はいろいろな方法を考えます。

 

 

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このネコちゃんは【中心静脈カテーテル】を設置し、

外頸静脈から高カロリー輸液を行いました。

併発した病気によって、頻繁に血液検査をしないといけなかったため、

カテーテルから採血も可能なこの方法を選択しました。

 

 

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このネコちゃんは内視鏡で【胃瘻(PEG)チューブ】を設置し、

胃に直接、強制給餌を行いました。

胃瘻チューブは清潔にしていればかなり長期間もちます。

持病で毎日皮下に点滴をしていた子なので、

これからはチューブから水分補給することが可能になりました。

 

 

 

このように、

併発した病気や、性格、家庭環境などによって、

そのネコちゃんに合った栄養補給の方法を選択します。

 

発見が早ければ助かる可能性がありますが、

肝臓は残り20%までやられないと症状に乏しいため、

後手後手に回ることが多い病気です。

 

 

太ったネコちゃんの食欲不振にはご注意を。

 

レッグペルテス病とは?

こんにちは

近ごろお腹回りに皮下脂肪がついたせいか、あまり寒さを感じない院長です。

少し前まで「あけましておめでとうございます」と言っていたのが、

もう1月も終盤に差し掛かってきています。

時の経つのは早いですね。

 

 

さて今年の当院の目標は、

『今できる医療行為のクオリティを上げ、全体のレベルアップをはかる』

とさせていただきました。

去年広げた医療の幅を、今年は深堀りしていきたいと思います。

今年も当院をよろしくお願い致します。

 

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レッグペルテス病とは、

原因不明で成長期の子犬の股関節が壊れてしまう病気です。

小型犬に多く、

去年手術した3頭とも、1歳までのトイ・プードルでした。

寝起きや散歩などの動き出しにビッコが見られるなどで連れてこられることが多く、

診察時に足を後ろに伸ばすと痛がります。

レントゲンで股関節(正確には大腿骨頭)の様子がおかしければこの病気の疑いが強く、

基本的には手術適応となってしまいます。

若いうちから手術で痛い目にあってしまうのはかわいそうですが、

手術しないとずっと痛いままなので、もっとかわいそうなのです。

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治療としては、小型犬の場合、

痛みの原因となっている股関節(大腿骨頭)を取ってしまう手術を行います。

関節をとってしまって大丈夫かとよく言われますが、

組織が関節の代わり(偽関節)になってくれるのでさほど問題にはなりません。

 

小型犬を飼い始めたオーナー様は後ろ脚のビッコには注意してください。

ほっておくと股関節がグズグズになり、

術後のリハビリが長期化するケースも少なくありません。

当院で対応可能な手術 2015年まとめ

こんにちは

獣医師の中です。

 

去年、「整形外科は手術できない」といいました。

しかし、

オーナー様からのご要望が多かったため、

「このままじゃあかん」と考え、

座学・見学・実習を積み重ねたのち、

今年は、

できることとできないことを見極めながら、

整形外科手術を行ってきました。

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写真は、

整形外科手術セット

神経外科手術セット

眼科手術セット

プレート固定手術セット

ウサギ・ハムスター・フェレット・鳥類などの小動物の手術セット

です。

今年はだいぶ器具が増え、できることも増えました。

まだ、軟部外科A・Bセットに、創傷処理セット、歯科セット、エキゾ処置セットなど…

2軍も合わせると大変な数です。

手術器具とはサージカルステンレスを使用して

高圧滅菌に耐えれるように作られてますから、

「なんでこんな高いねん」

ってくらいごっつ高いです。

(ハサミ1本で自転車が買え、ひとセットでクルマが買えます)

同じ手術を数十件しないと元は取れません。

でも、手術がうまくいき元気になっていく患者を見るのと、

オーナー様からかけていただく「ありがとう」という言葉は、

スタッフ一同、とっても嬉しいので、

それをやりがいにして、

借金にまみれながらもみんな頑張って仕事をしています。

 

 

今年も、手術を含む医療全般において、

できなかったことをできるようにするために、

研鑽を積み重ねてまいりました。

手術の勉強をしたあと、実際に練習を繰り返し技術をモノにしていくのですが、

(スーパーで手羽先やもも肉などを買ってきて練習します)

血も出ないので、とても楽しいです。

例えるなら、高さ5センチの綱渡りです。

落ちてもなんら問題ありません

 

しかし、これが実際の患者に行う実戦の手術となると全く別物です。

がかかっているため、

例えるなら、高さ100mの高層ビルからの綱渡りです。

やってる行為自体は同じかも知れませんが、状況が全く違います。

 

手術前は、解剖学の本を見ながらイメトレ。

手術中は、変な汗が出っぱなし。

(1時間が5分くらいに感じます。

冷静かつリラックスが最良、

緊張して自分を見失うようではいけません)

手術後は、ドキドキしながら本当に手術がうまくいったのか…。

 

手術は、切って止めて縫っての基本工程の繰り返しです。

しかし結果がモロに出てくるので、

現実から逃げずに受け止めなければなりません。

(どうぶつのせいにしてはダメです)

 

 

必ず頭の中に置いているのは、

客観的に見た自分の未熟さ・甘さです。

患者に危険がないかどうか。

執刀させていただくことで結果に責任を持てるかどうか。

 

けして無謀に、難手術に手を出すことなく、

治ったからといって慢心することなく、

さらに良い結果を出すために改良を続けることを心がけています。

 

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これまでに当院で行った軟部外科以外の手術に関してですが、

  • 下腿骨骨折整復術
  • 膝蓋骨内方脱臼整復術
  • 前十字靭帯断裂の関節外法
  • 片側椎弓切除術(椎間板ヘルニア)
  • 大腿骨頭切除術(レッグペルテス症・円靭帯断裂を伴う股関節脱臼)

 

腫瘍外科手術・形成外科手術・歯科手術・腹部外科などは従来通り対応可能。

胸部外科・脳外科に関してはまだ技術も経験もなく対応不可となります。

眼科はできることとできないことがあります。

オーナー様のみ手術の立会いは可能です。

 

これからも、当院をよろしくお願いいたします。

少しコーヒーブレイクです

ネタなんて探せば山のようにあるのでしょうが、

最近はスタッフ教育や年末調整で多忙を極めております。

 

 

はい、言い訳です。

 

 

今回は、病気のことを書くのはやめときます。

来月は、きちんと病気(整形外科を予定)のことを書こうと思っていますので…。

(まずはオーナー様の許可を得なければ…)

医療関係のことをもっと書かないと、

グーグルさんに、「ここはトリミングサロンだ」と誤認識されてしまうらしいです。

今後は、もっと手術のこととか入院のこととかも載せていくことにします。

 

 

ありがたいことに、当院のブログを一から読んでくれている方がたまにいらっしゃいます。

はじめに書き出したのは、開業以前の2013年11月くらいでしょうか?

もちろん、スタッフは僕以外いなかったので、僕がずっと書いていました。

今では、優秀なスタッフと交代し、僕はコラム・スタッフはブログを担当し、

だいたい月2のペースで更新してくれています。

 

 

昔のブログを振り返ってみると、

開業以前なので、

「こう考えて開業計画をした」

「こういったことがしたい」

など、

自分の考えを積極的に伝える内容が多かったと思います。

ご興味がおありでしたら、一度読んでみてください。

 

 

現実を知ってしまった今となっては、

過去の情熱を維持するのは難しいですが(苦笑)

イデア:理念という病院名とともに、

枝葉はぶれようが、幹はぶれずにこれからもやっていこうと思います。