肥満は万病のもと。
何人ものオーナー様にそう啓蒙してきました。
しかし最近、自分自身が太ってきており、
説得力がなくなってきております。
太ったネコちゃんは、ポッチャリしてかわいい。
で す が
肥満は様々な弊害をもたらします。
今回のお話、『肝リピドーシス』もそのひとつ…。
なんらかの原因によって
ゴハンを食べなくなったネコちゃん。
食べ物からエネルギーを摂れないため、
エネルギー源として全身の脂肪が肝臓に集められ、
その結果、
肝臓で分解される以上の脂肪が蓄積され脂肪肝になってしまいます。
つまりキャパ超えをした結果、フォアグラ、白いキモになるのです。
この病態を『肝リピドーシス』といいます。
こうなってしまうと、
肝臓は脂肪組織に邪魔され機能低下を引き起こし、
肌は黄色く変色(黄疸)して、
ますますゴハンを食べなくなる。
↓
ますます肝臓に脂肪が溜まる。
↓
ますます肝機能は低下する。
この悪循環の結果、肝硬変→肝不全となり死の転帰をたどります。
太ると、この肝リピドーシスになりやすくなります。
当院でも、重い病気にかかって食欲がなくなり、
肝リピドーシスになったネコちゃんたちが後を絶ちません。
治療法としては、
食欲低下の原因となっている病気→基礎疾患を治療するとともに、
これ以上の脂肪組織の蓄積を防ぐため、
一刻もはやく栄養バランスのとれた食事をとってもらうこと。
肝機能が残っていれば、脂肪組織は徐々に分解されていきます。
しかし
食欲のないネコちゃんはなかなかゴハンを食べてくれません。
そこで、我々獣医師はいろいろな方法を考えます。
このネコちゃんは【中心静脈カテーテル】を設置し、
外頸静脈から高カロリー輸液を行いました。
併発した病気によって、頻繁に血液検査をしないといけなかったため、
カテーテルから採血も可能なこの方法を選択しました。
このネコちゃんは内視鏡で【胃瘻(PEG)チューブ】を設置し、
胃に直接、強制給餌を行いました。
胃瘻チューブは清潔にしていればかなり長期間もちます。
持病で毎日皮下に点滴をしていた子なので、
これからはチューブから水分補給することが可能になりました。
このように、
併発した病気や、性格、家庭環境などによって、
そのネコちゃんに合った栄養補給の方法を選択します。
発見が早ければ助かる可能性がありますが、
肝臓は残り20%までやられないと症状に乏しいため、
後手後手に回ることが多い病気です。
太ったネコちゃんの食欲不振にはご注意を。