ペットの病気・気になる症状

「てんかん」ってどんな病気?

人間でも多い「てんかん」

実は犬にも多く、全体の約1%はてんかん持ちといわれています。

 

 

当院のペットホテルでも、

「てんかんのお薬飲んでるから、動物病院のホテルが安心」

という目的でご利用されている患者様が数人いらっしゃいます。

 

 

てんかんとは、ケイレンなどの発作を引き起こす病気の総称です。

発作の内容は様々ですが、意識がない発作は重症度が高いです。

特に溺れるような発作は亡くなる可能性もあります。

 

 

まず獣医師は、

発作の稟告を受けると、

頭の中で分類をします。

 

 

どんな発作なのか

発作前・後の様子は

その時間は

初発だけなのか

2回以上繰り返しているのか

その頻度は

etc

 

 

 

 

2回以上発作を繰り返す症例に対しては、

原因を追求する必要があります。

 

 

 

 

当院では特発性、つまり原因がよくわからない「てんかん」が多いです。

他にも、脳腫瘍や、脳炎から発作を起こす患者様がいらっしゃいます。

意外にも、

頭以外、

実はお腹の内臓や中毒なんかが原因だった!

というケースもあるため、

血液検査など色々検査しなくてはいけません。

色々検査した結果、

なにもなく、

MRIまで撮像し、本当にな〜んにも病変部が見つからなければ

「特発性てんかん」

となります。

 

 

 

 

治療法は、

原因がわかればそれに対処し、

わからない、または対応のしようがない場合は

発作を抑える抗てんかん薬を飲み続けることになります。

当院では、だいたい月1回の頻度を目安に、それ以上の発作があればお薬を出すようにしています。

(それ以外にも、進行が認められる場合や重い発作を起こす場合は薬を始めていきます)

 

 

 

 

お薬にも副作用があるため、

 

発作を0にする

ということは治療の目的とせず、

 

発作の頻度をしんどくないレベルまで減らす

ということが目的となります。

 

 

 

縁起でもありませんが、

もし自分の愛犬に発作が起こった場合、

あせらずに(というのは無理かもしれませんが)

主治医の連絡先を確認し、

発作が続いた時間や意識があったかどうかなど、

事細かに記録するようにして、

主治医に報告するようにしてください。

 

 

ペンペンたたいたりしてはいけませんよ。

 

 

※10分以上発作が続く場合は速やかに救急へ。

ARDS(急性呼吸促迫症候群)について

こんにちは

獣医師の中です。

 

5月に入り、予防のシーズン真っ最中です。

 

もちろん、あまり病気をしないことが一番なのですが、

年1〜2回、このシーズンだけ来院される元気などうぶつも多く、

 

 

おっ、ひさしぶり、元気だったみたいやな〜

 

あれ?太った?

 

 

みたいな明るい出会いがたくさんあります。

 

 

どうぶつの方からしたら会いたくないかもしれませんけどね(笑)

 

 

症状のない見た目元気などうぶつが10人来院すると、

9人はそういった出会いなのですが、

1人くらい、

 

 

ん?なんじゃこりゃ?

 

 

と、

意外な病気の症状が発見されたりすることも少なくないため、

このシーズンに病院に通うといった習慣はきわめて重要です。

 

 

 

健康診断をおすすめすると、

「健康に見えるから必要ないのでは 」

という返答が多いのですが、

「健康を確認するための健康診断」

ですので、

病気になってからの

「異常を見つけるための検査」

とは目的がちょっと違うんですね。

 

 

 

動物はちょっとした異常では何にも言わないため、

健康診断で健康を確認すること

がきわめて重要なのです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

さて今回は、あまり聞きなれない病気についてです。

最近

ARDS(急性呼吸促迫症候群)

という救急疾患が動物医療でも認知されてきております。

 

 

去年1例、

当院でも呼吸困難で来院された症例が、

死後の剖検で診断されました。

(そうなんです、力及ばずでした…)

 

 

健康なときの胸部レントゲン

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呼吸困難で来院時のレントゲン

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2枚を比較すると、

2枚目の方は、

胸部の肺の部分がモヤがかかったようになっています。

 

 

予兆なく急性に発症し、

酸素室にて管理しても なお呼吸は悪化、

抗生剤にもまったく反応なし、

数時間で病状は進行し、

助けることができなかった症例です。

 

 

 

症状は肺炎や肺水腫などと同様に呼吸ができなくなるのですが、

原因は呼吸器以外のところにある場合も多いです。

 

 

 

なぜ、別の場所の炎症が原因で、肺がやられるのでしょうか?

「炎症」という言葉がキーワードですね。

 

 

 

そう、肺のように血管の細い場所は、好中球などの炎症性細胞が集まりやすいからです。

これは細菌感染などの際、待ち構えてパクッと貪食しやすいからかもしれません。

 

 

どこかで起きた炎症が引き金となり、

炎症性細胞が暴走すると、

血管の隙間が広くなって血液内の細胞や液体成分が漏れたり、

好中球エラスターゼなどのたんぱく質分解酵素を出したりして、

肺の組織が壊れてくるんですね。

 

肺が潰れると呼吸ができなくなるので、

生物は死の転機をたどってしまいます。

 

 

 

この病態は歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなった原因として、

一時的にテレビでも取り上げられていましたので、

知っていらっしゃる方はおられるかもしれません。

 

 

 

ヒトでは40%前後の死亡率と報告されておりますが、

どうぶつでは残念ながらほぼ100%の死亡率といわれています。

 

症状が出てしまってからでは遅い致死的な病態のひとつです。

 

 

 

 

物いわぬ動物だからこそ、

日頃から、健康状態を注意深く観察していただくこと、

また、定期的な健康診断を受けていただくことをお願い致します。

低アルブミン血症について

こんにちは

獣医師の中です。

 

暖かくなり、蚊が姿をあらわす頃、どうぶつには予防のシーズンが始まります。

皆様、お忘れのないようにお願いいたします。

 

 

 

 

さて当院では、タイトルにあります

 

「低アルブミン血症」

 

という状態に陥り闘病中のわんちゃんが現在4人います。

 

 

 

 

そもそも

 

「アルブミン」ってなんぞや?

 

となると思いますが、

アルブミンとは、血液検査において一般的に測定される項目のひとつです。

 

体の中の「たんぱく質」のおよそ60%

血液の膠質浸透圧(濃さ)の80%を担っているものです。

体の中では物質の運び屋としても働きます。

 

 

 

なぜ、アルブミンが少なくなるのでしょうか?

 

その原因は、

  1. 作られていない
  2. どこかで漏れているか(だいたい腸か腎臓)
  3. 他のものに作り変えられているか。

 

 

 

血液検査の結果、アルブミンが2.5g/dLを下回れば

「低アルブミン血症」と判断されます。

そこまでは簡単なのですが、

わかってから原因を追求するまで結構大変な道のりがあります。

 

 

 

低アルブミン血症は病名ではないため、

他の病気の症状のひとつとして発現しますが、

  • 傷は治らないわ(たんぱく質なので)、
  • 薬の効き目が変わるわ(物質の運び屋なので)、
  • 全身むくむわ(血液が薄くなるので)、

 

体がたいへんな状態に陥ってしまいます。

 

 

 

不思議なのが、

こういった病気のコラムを書きはじめると、

なぜかタイムリーに同じような症例が来院されることです。

(縁起でもありません)

今日もひとり、腸からたんぱく質が漏れている疑いのある患者様が…。

高齢者の麻酔

こんにちは

獣医師の中です。

 

 

 

現在院内は、

昨今の動物医療の現状を反映するかのように

高齢者の入院が多くなってきています。

 

本日も3件の高齢者が入院中であり、

その子たちには共通点があります。

 

それは、

 

「10歳以上であり、全身麻酔でなんらかの処置を行った」

 

ということです。

 

 

 

 

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17歳のひめちゃん

 

全身麻酔下で計1時間30分の外科手術を行いました。

 

 

 

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10歳のラブリくん

 

最初は元気がなかったので、麻酔なしで処置ができましたが、

このラブリくん、

元気になると本性が出てきてガブリくんへ大変身!

よって全身麻酔下でカテーテル導尿を行いました。

 

 

 

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15歳のモカちゃん

 

この中では最もハイリスクな麻酔でした。

全身麻酔下で内視鏡を行い、

胃瘻チューブを設置しました。

 

 

 

 

高齢者の全身麻酔は、

「代償機能の低下」をどう対処するか。

それが大きな課題となります。

 

 

ようするに、内臓機能に余力がない状態なのです。

安全範囲が狭いんですね。

 

 

それに対して、麻酔によってさらに負担をかけることで、

術中・術後に様々な悪影響をもたらす可能性があります。

 

 

 

逆に、状態をきちんと把握し、リスク対応すれば

そこまで想定外のことは起こらないと考えています。

 

 

2歳の子と、17歳の子で同じ麻酔をかけては

後者のほうがリスクが高いのは当たり前です。

 

 

 

 

「高齢だから」という理由だけでは

麻酔をかけれない理由にはなりません。

 

 

 

 

・・・しかし、どの子の麻酔も緊張しました。

僕の寿命はどんどん縮んでいってる気がします(苦)。

 

 

恐怖の『肝リピドーシス』

 

肥満は万病のもと

 

何人ものオーナー様にそう啓蒙してきました。

しかし最近、自分自身が太ってきており、

説得力がなくなってきております。

 

 

太ったネコちゃんは、ポッチャリしてかわいい。

 

で す が

 

肥満は様々な弊害をもたらします。

今回のお話、肝リピドーシスもそのひとつ…。

 

 

 

なんらかの原因によって

ゴハンを食べなくなったネコちゃん。

食べ物からエネルギーを摂れないため、

エネルギー源として全身の脂肪が肝臓に集められ、

その結果、

肝臓で分解される以上の脂肪が蓄積され脂肪肝になってしまいます。

つまりキャパ超えをした結果、フォアグラ白いキモになるのです。

Fatty liver, eps10

この病態を『肝リピドーシス』といいます。

 

こうなってしまうと、

肝臓は脂肪組織に邪魔され機能低下を引き起こし、

肌は黄色く変色(黄疸)して、

 

ますますゴハンを食べなくなる。

ますます肝臓に脂肪が溜まる。

ますます肝機能は低下する。

 

この悪循環の結果、肝硬変→肝不全となり死の転帰をたどります。

 

 

太ると、この肝リピドーシスになりやすくなります。

 

 

当院でも、重い病気にかかって食欲がなくなり、

肝リピドーシスになったネコちゃんたちが後を絶ちません。

 

 

治療法としては、

食欲低下の原因となっている病気→基礎疾患を治療するとともに、

これ以上の脂肪組織の蓄積を防ぐため、

一刻もはやく栄養バランスのとれた食事をとってもらうこと。

肝機能が残っていれば、脂肪組織は徐々に分解されていきます。

 

しかし

 

食欲のないネコちゃんはなかなかゴハンを食べてくれません。

そこで、我々獣医師はいろいろな方法を考えます。

 

 

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このネコちゃんは【中心静脈カテーテル】を設置し、

外頸静脈から高カロリー輸液を行いました。

併発した病気によって、頻繁に血液検査をしないといけなかったため、

カテーテルから採血も可能なこの方法を選択しました。

 

 

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このネコちゃんは内視鏡で【胃瘻(PEG)チューブ】を設置し、

胃に直接、強制給餌を行いました。

胃瘻チューブは清潔にしていればかなり長期間もちます。

持病で毎日皮下に点滴をしていた子なので、

これからはチューブから水分補給することが可能になりました。

 

 

 

このように、

併発した病気や、性格、家庭環境などによって、

そのネコちゃんに合った栄養補給の方法を選択します。

 

発見が早ければ助かる可能性がありますが、

肝臓は残り20%までやられないと症状に乏しいため、

後手後手に回ることが多い病気です。

 

 

太ったネコちゃんの食欲不振にはご注意を。