ペットの病気・気になる症状

内視鏡検査とは?

当院では、

なかなか治らない下痢や嘔吐などの

慢性消化器疾患のどうぶつに

内視鏡検査が可能です。

 

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「内視鏡検査」という言葉にはあまり馴染みがないのか、

漢字からも内容がわかりづらいのですが、

 

(なかを)

(みる)

(スコープ)

 

ということですね。

 

「胃カメラ検査」

 

というと

 

「ああ!」

 

と、ご理解いただける場合も。

 

 

 

この「胃カメラ検査」ですが、

 

全身麻酔をかけないとできない

 

のが最大のネックとなり、

こちらが勧めても、

 

「したくない」

 

と断られることも多いです…。

 

 

 

しかし、この「胃カメラ検査」

よく考えてみてください。

 

ヒト医療では全身麻酔がいらないにしても、

かなり一般的に行われています。

 

人間ドックの1項目としても行われるくらいです。

 

 

 

ということは、

かなり重要な検査だということです。

それなのに、

どうぶつ医療においては

日常的に行われる検査ではありません。

 

 

 

 

別の用途になりますが、異物はよくとります。

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どうぶつでは、どうもこちらのイメージが強いようですね。

 

 

 

 

しかし、内視鏡は本来の用途は【検査】です。

 

 

食道〜胃〜小腸

また

大腸

 

といった口から肛門までの消化管の内部を目視でき、

怪しい場所から組織を採取して調べることも可能です。

 

こういった一連の検査は、

潰瘍・炎症・腫瘍・ポリープなどの診断に大きく貢献します。

 

 

 

 

最近では、

直腸に腫瘍のあるわんちゃんに

下部消化管内視鏡検査(大腸鏡検査)を行いました。

 

これはお尻から内視鏡を入れる検査です。

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中央やや下に見えるのが直腸腫瘍です。

 

 

結果的に手術計画の立案に大きく貢献し、

手術は無事、計画通りに終えることができました。

 

 

 

 

このように、メリットの大きい検査です。

 

 

 

確かに全身麻酔下でないとできないので、

血液検査やエコー検査のように

気軽にできる検査ではないですが、

「早くやってたら良かった」

と思うような恐ろしい病気が見つかることもあります。

 

当院では、そういった理由から、

リスクを感じた際は積極的に勧めるようにしております。

イヌの緑内障について

こんにちは。

獣医師の中です。

 

最近暑い日が続きますね。

この仕事をしていると、

あまり日中外に出る機会はないですが、

子供を連れて虫やサワガニ取りに出かけたときなんかに

あらためて夏を感じることが多いです。

 

皆様、くれぐれも

アウトドアでの熱中症には気をつけてくださいね。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

今回のコラムは何にしよう…。

と思っていたら、

ここ最近で

緑内障のワンちゃんを連続で診察する機会がありました。

 

 

緑内障とは、

目の水分がなんらかの原因でたまり、

目が腫れてしまう病気です。

 

 

緑内障は眼圧が高くなるので

診断自体は容易です。

 

 

この機械でポチっとして眼圧を計るだけです。

おとなしい子であれば一瞬で終わります。

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「じゃあ何で緑内障になるんだ」 

 

っていう原因についてはたくさん考えられるので、

それ以外にも

色んな検査をしないといけない訳ですが…。

 

 

 

緑内障は外観も特徴的で、

散瞳といって瞳孔が開くので、

名前の通り目の奥が(青っぽく)に見えます。

また、白目の部分は真っ赤に充血します。

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人間では、頭痛などの症状で、比較的早期に発見できるのですが、

どうぶつでは、発見された時は経過が長いことが多いです。

高眼圧が持続して網膜がやられ、

すでに失明している場合もあります。

 

 

 

治療としては、以下の2つに分けられます。

 

◯視力が残っている場合

・・・目薬や麻酔下の処置で眼圧をコントロールします。

 

◯視力がもはや残っていない場合

・・・義眼や眼球摘出などの外科手術を検討します。

 

 

目薬はかなり高価であり、

簡単にさせてくれない子も多く、

発見時には視力があっても

結局は失明に至ることが多いです。

 

 

獣医師・オーナー様を悩ませる、

治療が難しい病気のひとつですね。

「てんかん」ってどんな病気?

人間でも多い「てんかん」

実は犬にも多く、全体の約1%はてんかん持ちといわれています。

 

 

当院のペットホテルでも、

「てんかんのお薬飲んでるから、動物病院のホテルが安心」

という目的でご利用されている患者様が数人いらっしゃいます。

 

 

てんかんとは、ケイレンなどの発作を引き起こす病気の総称です。

発作の内容は様々ですが、意識がない発作は重症度が高いです。

特に溺れるような発作は亡くなる可能性もあります。

 

 

まず獣医師は、

発作の稟告を受けると、

頭の中で分類をします。

 

 

どんな発作なのか

発作前・後の様子は

その時間は

初発だけなのか

2回以上繰り返しているのか

その頻度は

etc

 

 

 

 

2回以上発作を繰り返す症例に対しては、

原因を追求する必要があります。

 

 

 

 

当院では特発性、つまり原因がよくわからない「てんかん」が多いです。

他にも、脳腫瘍や、脳炎から発作を起こす患者様がいらっしゃいます。

意外にも、

頭以外、

実はお腹の内臓や中毒なんかが原因だった!

というケースもあるため、

血液検査など色々検査しなくてはいけません。

色々検査した結果、

なにもなく、

MRIまで撮像し、本当にな〜んにも病変部が見つからなければ

「特発性てんかん」

となります。

 

 

 

 

治療法は、

原因がわかればそれに対処し、

わからない、または対応のしようがない場合は

発作を抑える抗てんかん薬を飲み続けることになります。

当院では、だいたい月1回の頻度を目安に、それ以上の発作があればお薬を出すようにしています。

(それ以外にも、進行が認められる場合や重い発作を起こす場合は薬を始めていきます)

 

 

 

 

お薬にも副作用があるため、

 

発作を0にする

ということは治療の目的とせず、

 

発作の頻度をしんどくないレベルまで減らす

ということが目的となります。

 

 

 

縁起でもありませんが、

もし自分の愛犬に発作が起こった場合、

あせらずに(というのは無理かもしれませんが)

主治医の連絡先を確認し、

発作が続いた時間や意識があったかどうかなど、

事細かに記録するようにして、

主治医に報告するようにしてください。

 

 

ペンペンたたいたりしてはいけませんよ。

 

 

※10分以上発作が続く場合は速やかに救急へ。

ARDS(急性呼吸促迫症候群)について

こんにちは

獣医師の中です。

 

5月に入り、予防のシーズン真っ最中です。

 

もちろん、あまり病気をしないことが一番なのですが、

年1〜2回、このシーズンだけ来院される元気などうぶつも多く、

 

 

おっ、ひさしぶり、元気だったみたいやな〜

 

あれ?太った?

 

 

みたいな明るい出会いがたくさんあります。

 

 

どうぶつの方からしたら会いたくないかもしれませんけどね(笑)

 

 

症状のない見た目元気などうぶつが10人来院すると、

9人はそういった出会いなのですが、

1人くらい、

 

 

ん?なんじゃこりゃ?

 

 

と、

意外な病気の症状が発見されたりすることも少なくないため、

このシーズンに病院に通うといった習慣はきわめて重要です。

 

 

 

健康診断をおすすめすると、

「健康に見えるから必要ないのでは 」

という返答が多いのですが、

「健康を確認するための健康診断」

ですので、

病気になってからの

「異常を見つけるための検査」

とは目的がちょっと違うんですね。

 

 

 

動物はちょっとした異常では何にも言わないため、

健康診断で健康を確認すること

がきわめて重要なのです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

さて今回は、あまり聞きなれない病気についてです。

最近

ARDS(急性呼吸促迫症候群)

という救急疾患が動物医療でも認知されてきております。

 

 

去年1例、

当院でも呼吸困難で来院された症例が、

死後の剖検で診断されました。

(そうなんです、力及ばずでした…)

 

 

健康なときの胸部レントゲン

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呼吸困難で来院時のレントゲン

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2枚を比較すると、

2枚目の方は、

胸部の肺の部分がモヤがかかったようになっています。

 

 

予兆なく急性に発症し、

酸素室にて管理しても なお呼吸は悪化、

抗生剤にもまったく反応なし、

数時間で病状は進行し、

助けることができなかった症例です。

 

 

 

症状は肺炎や肺水腫などと同様に呼吸ができなくなるのですが、

原因は呼吸器以外のところにある場合も多いです。

 

 

 

なぜ、別の場所の炎症が原因で、肺がやられるのでしょうか?

「炎症」という言葉がキーワードですね。

 

 

 

そう、肺のように血管の細い場所は、好中球などの炎症性細胞が集まりやすいからです。

これは細菌感染などの際、待ち構えてパクッと貪食しやすいからかもしれません。

 

 

どこかで起きた炎症が引き金となり、

炎症性細胞が暴走すると、

血管の隙間が広くなって血液内の細胞や液体成分が漏れたり、

好中球エラスターゼなどのたんぱく質分解酵素を出したりして、

肺の組織が壊れてくるんですね。

 

肺が潰れると呼吸ができなくなるので、

生物は死の転機をたどってしまいます。

 

 

 

この病態は歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなった原因として、

一時的にテレビでも取り上げられていましたので、

知っていらっしゃる方はおられるかもしれません。

 

 

 

ヒトでは40%前後の死亡率と報告されておりますが、

どうぶつでは残念ながらほぼ100%の死亡率といわれています。

 

症状が出てしまってからでは遅い致死的な病態のひとつです。

 

 

 

 

物いわぬ動物だからこそ、

日頃から、健康状態を注意深く観察していただくこと、

また、定期的な健康診断を受けていただくことをお願い致します。

低アルブミン血症について

こんにちは

獣医師の中です。

 

暖かくなり、蚊が姿をあらわす頃、どうぶつには予防のシーズンが始まります。

皆様、お忘れのないようにお願いいたします。

 

 

 

 

さて当院では、タイトルにあります

 

「低アルブミン血症」

 

という状態に陥り闘病中のわんちゃんが現在4人います。

 

 

 

 

そもそも

 

「アルブミン」ってなんぞや?

 

となると思いますが、

アルブミンとは、血液検査において一般的に測定される項目のひとつです。

 

体の中の「たんぱく質」のおよそ60%

血液の膠質浸透圧(濃さ)の80%を担っているものです。

体の中では物質の運び屋としても働きます。

 

 

 

なぜ、アルブミンが少なくなるのでしょうか?

 

その原因は、

  1. 作られていない
  2. どこかで漏れているか(だいたい腸か腎臓)
  3. 他のものに作り変えられているか。

 

 

 

血液検査の結果、アルブミンが2.5g/dLを下回れば

「低アルブミン血症」と判断されます。

そこまでは簡単なのですが、

わかってから原因を追求するまで結構大変な道のりがあります。

 

 

 

低アルブミン血症は病名ではないため、

他の病気の症状のひとつとして発現しますが、

  • 傷は治らないわ(たんぱく質なので)、
  • 薬の効き目が変わるわ(物質の運び屋なので)、
  • 全身むくむわ(血液が薄くなるので)、

 

体がたいへんな状態に陥ってしまいます。

 

 

 

不思議なのが、

こういった病気のコラムを書きはじめると、

なぜかタイムリーに同じような症例が来院されることです。

(縁起でもありません)

今日もひとり、腸からたんぱく質が漏れている疑いのある患者様が…。