ペットの病気・気になる症状

サプリメントについて

昨今では、動物用の「サプリメント」が多数開発されています。

しかし、人間用は一般的になっているサプリメントですが、

動物にも与えているオーナー様は少ないようです。

今回は、サプリメントとは、いったい何かというところをお話します。

 

サプリメントとは、「栄養補助『食品』」のことです。

お薬のような治療効果を期待するのではなく、

体の栄養バランスを整え、

動物が本来持っている自然治癒力免疫力を高めて、

病気にかかりにくい体を作る目的で投与されています。

あくまで「薬」ではなく、「食品」なのです。

 

消化器では、プロバイオティクスが最近注目されています。

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体の中には何十兆もの細菌が共存しており、

体調はこれらの細菌のバランスに左右されていると言っても過言ではないと言われています。

その中でも、体にとって良いはたらきをする善玉菌と悪いはたらきをする悪玉菌があり、

体内で陣取り合戦を繰り広げています。

プロバイオティクスは、善玉菌です。

善玉菌を摂取することで、

体の中の悪玉菌を減らし、体調を良い方向へ傾けてやるという目的で投与されます。

実際に当院では口腔内のプロバイオティクスを扱っておりますが、

口臭がなくなったと言われる方が多いようです。

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他にも、目的別に挙げますと、

関節では、ミドリイガイ、コンドロイチン、グルコサミン、MSMなど

被毛においては、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、不飽和脂肪酸など

肝臓では、ミルクシスル、ウコン、アミノ酸、ビタミンなど

不安症には、初乳タンパク、テアニン、メラトニンなど

免疫活性に、βグルカン、DMGなど

全般的なサプリメントとして、ビタミンやミネラル、消化酵素などが挙げられます。

 

与え方については、

チーズなどの動物の好むおやつと一緒に与えたり、

少量の水と一緒につるっと喉の奥に入れてあげたり、

フードと混ぜて与えたりすることが多いようです。

先ほどの口腔内のプロバイオティクスは、

胃酸や胆汁に弱いので、

粉にして歯肉に刷り込むのが1番良いようです。

最近では、動物が好む味付けがされてあったり、

カプセルなど形状に工夫がされてあったり、

特に嗜好性の高いチュアブルと呼ばれる

半生タイプのサプリメントも開発されています。

 

前述の通り、サプリメントはお薬とは違い、

投与してすぐに効果が出るわけではありません

あくまで「栄養補助食品」として、長い間続けてもらうことが大事です。

 

病気になってからでは遅いので、

病気になりにくい体をつくり予防するという考えが重要なのですね。

 

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最近、病院でスタッフルームに焼き肉などができるプレートを買いました。

そのため、毎週のようにたこ焼きや焼きそば、焼き肉パーティを企画してくれます。

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一般的に、動物病院のスタッフは、女性が中心です。

つまり、パーティは女子会となります。

女性の一般像として、もっとおしとやかなイメージがありましたが、

男性の集まりより会話がディープで、儚くもイメージは崩れ去りました。

犬の涙について

眼科は、特殊な器具や知識が必要になる専門分野のひとつです。

構造物は小さく、機能豊富で、デリケートであり、

検査や目薬もいやがる動物が多いため、治療に難儀します。

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今回は、目のお話、そのなかでも意外と重要なのお話をします。

 

涙には重要な役割があることをご存知でしょうか。

涙とは、ただの悲しいときに目から出てくる水ではございません。

目の表面を潤す作用があることは、ご承知の通りだと思います。

その他にも、表面のバリアとして感染を防いだり、

角膜に酸素や栄養を補給する作用もあります。

目の表面の角膜(黒目の部分)は、光を通すために透明になっており、

それはつまり、血管がないということでもあります。

よって、涙が、酸素や栄養を補給してあげないと飢えてしまうのです。

 

涙液は、厚さ0.01mmと薄いですが、実は3層粘液層、層、層)に分かれています。

1番内側のムチンを含む粘液層が角膜と他の2層をひっつけるのりの作用があり、

1番外側にある油層が水層の蒸発を防いでいます。

 

犬にもドライアイがあります。

1番多いのが、免疫異常による水層の量的低下ですが、

高齢だとマイボーム腺(油分を分泌する場所)が詰まりやすくなり発症する場合もあります。

人間のように、パソコンの見過ぎや瞬きの減少が原因となることはあまりありません。

治療は一生涯にわたる可能性があります。

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11月24日現在、当院では、無料で健康なわんちゃんに涙液の量を調べる検査を行っています。

製薬会社が、日本における健常犬の涙液量の正常値に関する統計をとっているとのことです。

正常値がわからないと異常値もわからないため、

こういった統計が全国の動物病院から集められ、正常範囲がわかり、病気の目安ができるのですね。

ご協力いただける方は、受付スタッフまでよろしくお願いします。

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実は、このコラムは、自分自身で月2回の更新を義務付けています。

義務付けないと、コラムを書かなくなるのが目に見えているからです。

自分でも、よく続いていると思います(笑)

スタッフブログに比べ、つまらない内容かも知れませんが、

誰か見てくれている人がいると信じて、これからも書き続けようと思っています。

猫の肥大型心筋症について

先日、猫の動脈血栓塞栓症の症例が緊急来院されました。

この病気は、かなりの確率で心筋症が原因であるといわれています。

今回も、肥大型心筋症が原因で、血液の流れが行き詰まり、

その結果、左心房内で血栓がつくられ、

後肢に分岐する動脈に塞栓したものと考えられました。

 

動脈血栓塞栓症は、突然発症します。

事前に心疾患の病歴がみられたのは1割以下だといわれています。

4割の猫では聴診所見は正常であるといわれています。

つまり、早期発見し、予防するのが困難な疾患であるということです。

(犬で多い弁膜症に関しては、聴診でわかることがほとんどです)

ほとんどが両後肢に発症しますが、

入院下での治療後、生存して退院できる可能性は3〜4割ほど。

退院したのち、治療しても1年は生きれないといわれています。

(専門医の治療を受けての場合です)

特に、低体温がみられた場合の予後は悪いといわれています。

 

心筋症は、肺水腫や胸水貯留によって、呼吸困難で来院される場合もあります。

いずれにせよ、緊急疾患のため、検査よりも治療を優先しないといけない場合が多く、

やはり病気を事前に発見しておくことは重要となります。

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(画像は、バレンタインハートと呼ばれる心房拡大の所見です)

 

最近では、猫の心筋症を早期発見するために、特殊な血液検査が推奨されています。

健康診断時に問診・聴診→心電図・レントゲン・血液検査などで異常が出た場合、

超音波検査で心臓内を精査されることをおすすめします。

整形外科について

よく、ご相談を受けるのが、「骨折は対応していますか」というもの。

 

私は、学生時代の研究内容が硝子軟骨の再生についてであったため、

大学の先輩や神戸大の医学部整形外科にご指導いただきながら研究に励んでまいりました。

また、その関係からか、大学病院でもそういった手術の助手などを経験してきました。

 

面白い事に、学生時代に研究してきた事は、その獣医師の好きな分野になることが多いです。

私も同様に、整形外科に興味をもち、色々勉強しました。

 

しかし、勉強すればするほど、考えることがありました。

 

 

人間の病院でも、整形外科というのは特に技術が問われます。

〜科〜科と科目が分かれている人医療でも、難しい技術なのです。

ひとつとして同じ折れ方、場所、治り方をする骨折はないため、

プレート、創外固定、ピン、ワイヤーなど、手術方法も様々。

この判断には、経験が必要です。

毎日コンスタントに何例も手術を経験しないと習得できないような職人技。

仮に才能があり、本格的に学んだとしても、ある程度習得できるのは何年も先の話です。

しかも、この分野の手術は失敗すると、あとあと後遺症が残る可能性があります。

ならば、中途半端に手を出すのはダメ。本格的にやるのかどうか・・・。

もともと早期の開業を視野に入れていたため、とても悩みました。

 

そこで、以前の勤務先では、外固定リハビリテーションに絞り勉強しました。

 

難しい手術は、専門医にお願いし、術後管理を近所の病院でできれば、

オーナー様の負担は減らせるし、症例の治る可能性も高める事ができる。

 

結論として、そう考えました。

 

同様の事は、眼科、胸部外科、脳神経外科などでも言えると思います。

 

難しい専門の技術と経験を要する手術は、上手い先生にお任せし、

希望であれば、当院で術後管理を受けれるようにすればいい。

そう考えています。

 

できないことを、できないと認め、「できない」と言う。

「できる」という発言には、最後まで責任を取る覚悟が必要。

結果として患者側にとって最良の形がとれればよい。

 

最後には、すべての獣医師がもっているであろう仁術としての心、

「動物とオーナー様を助けたい」という思いが大事なのだと思っています。

 

 

当院は、「骨折は対応していますか」という質問には、こう答えています。

 

「残念ながら、当院では骨折の手術ができません。

しかし、確かな技術を持つ専門の動物病院をご紹介することはできます。

術後のご相談などはご希望でしたら当院で対応することが可能です。

この子が治るまでは、オーナー様が迷わないよう、

最後まで責任を持って対応させていただきます。」

恐ろしい病気~膵炎~

最近、立て続けに膵炎(すいえん)の患者様が来院されます。

 

膵炎といえば、チュートリアルの福田さんや中川家の剛さんなど、

多数の芸能人が罹患しニュースになることがあるため

知っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

動物でも人と同様に、膵炎はあります。

症状は、下痢や嘔吐などの消化器症状など。

特徴的なのは、背中に近い腹痛のため、

椎間板ヘルニアなんかとよく似た激しい痛みの症状を示します。

背中を丸めてじっとしていたり、抱くとキャンと鳴いたりします。

「祈りの姿勢」といって、お尻を後方に突き出してひれ伏すような姿勢をとることもあります。

重症例、進行例では、命に関わることも多い恐ろしい病気のため、

ご自宅でこのような様子を見かけたら早急にホームドクターに相談してください。

 

膵臓

膵臓とは、胃の裏側にへばりついている臓器であり、

その主な機能のひとつが、

体の消化機能の大半を占める消化液、「膵液」を分泌することです。

「膵液」は食べ物の三大栄養素である、

「炭水化物」「脂質」「タンパク質」をすべて溶かすことができます

まさに、最強の消化液です。

 

では、なぜ、膵臓は自分自身を溶かさないのでしょうか。

実は膵液は、膵臓の中では機能を持たず、

十二指腸に分泌されて活性化し、はじめて機能を持ちます。

膵炎になると、この順番が何らかの原因でうまくいかず、

膵臓の中で活性化してしまい自己消化が起こります。

体の中がドロドロに溶けていくのです。

 

治療法は、直接劇的に効果のあるものはなく、点滴に頼ることになります。

軽症例では、通院下で皮下点滴のため通っていただく場合もありますが、

重症例では、入院下での静脈点滴は必須です。

炎症の悪循環を絶たなければいけません。

治療が長期に渡ることも多いです。

 

また一度溶けた膵臓はもろくなるため、再発が多いのもこの病気の特徴です。

 

まさに、一筋縄ではいかない病気であることがおわかりいただけたでしょうか。

 

特定の犬種、人間の食べ物、高脂肪食、肥満やストレスが危険因子となりますので、

これらにあてはまる場合には、特に注意が必要です。