ペットの病気・気になる症状

「膝がはずれる」とは?

小型犬に比較的よくみられるこの病気、

正式には「膝蓋骨脱臼」と書きます。

 

kneejoint

 

膝のお皿(膝蓋骨)が内側または外側にずれる(亜脱臼〜脱臼)ことをいいます。

 

急性例だと痛みを訴えることもありますが、慣れてしまうとそれほど痛がらず、

放置されがちな病気です。

膝のお皿は、

太もも側は太ももの筋肉

すね側はに、靭帯でくっついておりますので、

すれっぱなしだと膝が不安定になり、

足が変形してきたり、

前十字靭帯や半月板、ひざの軟骨の損傷などをまねきやすくなります。

外れたり収まったりする脱臼癖をもっている犬においては、

5〜10歳になった段階において、

約20%の症例前十字靭帯断裂が併発するといわれています。

 

原因は、生まれつきの素因を持っていることが多く、

膝のお皿、お皿の乗る「みぞ」の形の異常、

太もも側の靭帯の作用する方向と、

すね側の靭帯の作用する方向が異なっていることなどがあげられます。

 

たまにしか脱臼しない場合、

もしくは体重が軽かったりして、膝に負担のかかりにくい子の場合、

内科的に様子を見る場合もあります。

 

脱臼しっぱなし、またはびっこが著しい場合、

長い目でみると後ろ足の全体的な変形を伴い、

歩けなくなってしまう可能性もありますので、

手術にて上記の原因を修正する方法を提案しております。

 

手術はさまざまな術式を組み合わせて行います。

 

手術費用は比較的高額となり、今は動物の状態に問題がないことから、

あまり手術は希望されない傾向にあります。

 

しかし両足ともそのような異常を伴っている場合もあり、

将来的な運動障害がさまざまな程度で認められることから、

よくみる割に、実はなんぎする病気なのです。

 

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コラムの月2回の更新がしんどくなってきました…。

そこで一周年を期に、月1回の更新にしようとたくらんでいます。

 

「興味ないので別に良い」

「写真豊富なブログしか見ていないのでむしろ良い」

「院長の話は興味がそそられない」

「どうでもよい」

 

などの意見多数と思われますが、

院長自身のネタ切れとガソリン切れのため、

更新頻度の変更の件、ご了承いただければと思います。

よろしくお願い致します。

イヌの糖尿病について

地域の皆様に支えられ、

もうすぐイデア動物病院は開院して一年になります。

これからも、理念を忘れずに精進していきたいと思います。

 

糖尿病は、ヒトで有名な生活習慣病のひとつですが、

イヌでもよくみられる病気のひとつです。

 

ヒトの患者のイメージとしては、肥満体型を思い浮かべますが、

イヌにおいてそのイメージは一般的ではありません。

痩せているのに糖尿病?といわれることもありますが、

そうなんです。

糖尿病になると、食べても食べても痩せるんです。

 

食べているのに痩せてきた。

水をよく飲みよくおしっこするようになった。

 

これらの症状が出ている場合は糖尿病が疑えます。

 

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http://www.royalcanin.co.jp/new/health_nutrition/health/diabetic/より引用

 

当院でも先日、失明を主訴に来院されたご高齢のわんちゃんが、

一般状態は良好とのことでしたが、

念のため健康診断もかねて血液検査をしたところ、

非常に重篤な糖尿病が見つかった例がありました。

この場合、失明は糖尿病による網膜変性と考えられました。

 

糖尿病は血液が糖でドロドロになる病気のため、

全身のいたるところに悪影響を及ぼします。

 

当院では、たとえどんな病気であっても、

高齢犬で治療を開始する場合、

一度は血液検査をしてみることをおすすめしています。

高齢の場合、元気そうに見えても、

コレステロールが高かったり、

腎臓や肝臓の数値が悪かったりすることが多く、

根本として意外な病気が隠れていたり、

代謝の衰えからお薬が効きすぎたりすることがあるからです。

 

動物は話せないことから症状がわかりにくいため、

一見、元気でも、意外なほど病気が隠れているものなのです。

フィラリア症について

4〜6月の予防のシーズンがもうすぐやってきます。

オーナー様の中には、

はがきが届いたので、

ただなんとなく動物病院にきて、

何かのワクチンの注射をして、お薬をもらって…という方もいらっしゃるようです。

 

当院では、

予防内容を繰り返し説明し、理解していただいたほうが、

より重要性を知り積極的に予防に取り組んでいただけると考えておりますので、

しつこく、しつこく、説明するよう心掛けております。

ウザい!と思わずに聞いてください。

 

予防は、あくまで「予防」。

病気になってからでは遅いので、

病気にならないようにするための医療行為が「予防」にあたります。

「予防」は効果がわかりにくいため、利益と関連づけられて叩かれやすいですが、

昨今の動物の平均寿命の上昇が、予防の重要性を物語っていると思います。

 

たまにネットなどで、動物病院のお金儲けのため、なんて書かれたりしますが、

病気にならないように予防に取り組んでいるのに、悲しい気持ちになりますね。

そんなこと言うなら、

どの業種であっても、社会人として利益を出さないと生きていけません。

 

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では本題にうつりますが、

昔から、平均寿命を下げていた代表的な病気がフィラリア症になります。

予防の中で、1番重要といっても過言ではありません。

なぜなら、そのへんにいる「」が媒介する病気であるからです。

 

ちなみに蚊は、世界で最もヒトを殺している生物です。

(年間に約72万人だそうです!)

 

フィラリアに感染すると、

心臓にそうめんみたいな成虫がたくさん寄生して、

心臓や肺、血管などの循環器系に多大なダメージを与え、

放置すれば死に至ります。

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これを予防するためには、

年一回、1年間効果のある駆虫薬注射する方法や、

蚊のいる4・5月〜12月までの月一回、

飲み薬スポット薬を投与して、

蚊から移動してくる幼虫をこまめに「駆虫」することが大事です。

 

当院でも、

2〜3月にフィラリア駆虫薬の注射

4〜6月に各種予防・健康診断のキャンペーンを行います。

詳細はまたホームページの「お知らせ」などで事前に告知していきますので、

よろしくお願い致します。

恐怖の胃拡張・捻転症候群

あけましておめでとうございます。

旧年は大変お世話になりました。

本年度もよろしくお願い致します。

 

皆様は冬の休暇、

ゆっくりされましたでしょうか。

私はひたすら手術、急患、入院、ペットホテルの世話をしていました。

 

そんななか、ゲレンデが溶けるほど恋したいのか、

健康診断をかねた超音波検査中、

無意識のうちに広瀬香美を口ずさんでおり、

保定中のスタッフに白い眼で見られてしまいました。

(ちなみに、私は妻も子供もおります)

 

さて、皆様は、

大型犬に多発する、

胃拡張・捻転症候群(Gastric Dilatation-Volvulus:GDV

という病気をご存知でしょうか。

 

夜間救急を経験した獣医師であれば一度は経験する疾患であると思います。

当院でも年末の診療時間外に一例執刀しました。

 

私は腰が悪いため、大型犬の診療はとてもたいへんです。

 

GDVは胸の深い大型犬種に多くみられますが、

ミニチュアダックスなどの小型犬にもみられます。

原因は明らかになっておりませんが、

胃の中がガスでパンパンになり、ねじれてしまう病気です。

 

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大型犬のオーナーさんの中には、

食前食後は興奮や運動をさせないようにしたり

早食いドカ食いをやめさせたり

消化の良いフードを与えたりして

この病気にならないよう気をつけていらっしゃる方もおられます。

 

GDVは緊急疾患のため、病院としてもスピード勝負となります。

急に胃がねじれ、

胃にくっついている脾臓、腹部の大血管がまきこまれて虚血して

時間とともに致命的なダメージを負ってしまうのです。

 

診断後、すぐにガス抜きをして、

開腹下でねじれを修正し、

再発することがないように、

胃と腹壁を固定します。

 

もし迅速に手術まで乗り越えてくれたとしても、

組織の壊死、再還流障害などの問題があり、

術後の死亡率も高い恐ろしい病気です。

 

経験上、

ねじれを修正した後に、

血流が戻り組織の色が良くなる症例は予後が良いようですが、

発症後の時間経過が長かったり、

ねじれの角度が大きく、

修正後も濃い紫色から色が戻らない症例は予後が悪いと思われます。

 

 

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緊急疾患であるGDVの治療で重要なことは、

常に第1発見者であるはずのオーナー様にこの病気のことをよく知っていただき、

食後数時間で急に様子がおかしくなったら

すぐにホームドクターに問い合わせていただくことです。

 

ただし、食後数時間で発症した場合、

ホームドクターが休診時間である場合も多いので、

万が一のために、夜間救急への連絡先を控えておいていただくことも重要です。

アレルギー性皮膚炎について

犬・猫・ウサギなど動物の皮膚は、つまむとよく動きます。

これは、ヒトと比較して皮膚が薄くデリケートで、

その下の筋肉との結びつきが弱いためです。

皮膚は体にとって細菌など異物を防ぐバリアとなる作用があります。

つまり動物はバリアが薄いため皮膚病になりやすいと言えます。

 

皮膚は直接見ることができる臓器であり、

皮疹は疾患の結果を表現しています。

皮疹を読み解くには知識経験が必要であり、

探偵のような洞察眼問診が必要です。

 

皮膚病の原因として多くみられるのはアレルギーです。

アレルギーの原因には、

  • ハウスダストや花粉などが原因となるアトピー
  • たべものが原因となる食物アレルギー
  • ノミの唾液などが原因となるノミアレルギーなど、様々あります。

 

これらは体質の問題なので根治は困難ですが、ほうっておくと、

強いかゆみはストレスとなり、食欲や元気など一般状態にも影響を及ぼします。

よって、アレルギー性皮膚炎の治療目的は、

今ある100%のかゆみを、50%にしてあげること

つまり、体質の問題なので治すのは難しいため、

かゆみをストレスを感じない程度に抑えてあげることが目的となります。

 

アレルギー性皮膚炎の発症の原因には、

ひとつのアレルゲンだけが関与していることは少ないです。

複数のアレルゲンが重なり、それらが自分の許容量を超えることでかゆみが出てきます。

しかも、汚れた手や口でかきむしるので、感染症を併発していることも多々あります。

(初診時には大半が自己損傷か二次感染を起こしています。)

かゆみを抑えるには、それらさまざまな要因について、可能な限り除去し、

自分の許容量を超えないようにすることです。

 

ステロイドは、アレルギーに対し有効ですが、

根本解決にはなりません。

ステロイドだけで漫然と治療を行うことは、

副作用の点からもあまり良くありません。

シャンプー、保湿、ブラッシングなどでスキンケアを行い、

免疫抑制剤やインターフェロン注射によって免疫を調整したり、

かゆみの基となるヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン剤、

皮膚のバリアを強化するサプリメントやフードを併用することで、

ステロイドの量を減らすことが肝心です。

 

アレルギーをもつ動物の管理をするうえで重要なことは、

その子の体質と誠実に向き合い、病気と上手くつきあっていくことです。

 

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以下に当院で用いているアトピー性皮膚炎の

診断基準(Veterinary Dermatology, 2010) を記載します。

1. 初発年齢が3才未満
2. 飼育環境のほとんどが室内
3. ステロイドによって痒みがおさまる
4. 慢性的あるいは再発性のマラセチア感染症
5. 前肢に皮膚病変が認められる
6. 耳介に皮膚病変が認められる
7. 耳の辺縁には皮膚病変が無い
8. 腰背部には皮膚病変が無い

まずは感染症を除外し、

ノミ予防をしており、

食物アレルギーの可能性が低い

もしくは食物除去試験に反応しない症例で、

これら8つの項目を5つ以上満たすと、

アトピー性皮膚炎の可能性が高いと判断しています。

(感度・特異度ともに80%程度)

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