ペットの病気・気になる症状

恐怖の胃拡張・捻転症候群

あけましておめでとうございます。

旧年は大変お世話になりました。

本年度もよろしくお願い致します。

 

皆様は冬の休暇、

ゆっくりされましたでしょうか。

私はひたすら手術、急患、入院、ペットホテルの世話をしていました。

 

そんななか、ゲレンデが溶けるほど恋したいのか、

健康診断をかねた超音波検査中、

無意識のうちに広瀬香美を口ずさんでおり、

保定中のスタッフに白い眼で見られてしまいました。

(ちなみに、私は妻も子供もおります)

 

さて、皆様は、

大型犬に多発する、

胃拡張・捻転症候群(Gastric Dilatation-Volvulus:GDV

という病気をご存知でしょうか。

 

夜間救急を経験した獣医師であれば一度は経験する疾患であると思います。

当院でも年末の診療時間外に一例執刀しました。

 

私は腰が悪いため、大型犬の診療はとてもたいへんです。

 

GDVは胸の深い大型犬種に多くみられますが、

ミニチュアダックスなどの小型犬にもみられます。

原因は明らかになっておりませんが、

胃の中がガスでパンパンになり、ねじれてしまう病気です。

 

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大型犬のオーナーさんの中には、

食前食後は興奮や運動をさせないようにしたり

早食いドカ食いをやめさせたり

消化の良いフードを与えたりして

この病気にならないよう気をつけていらっしゃる方もおられます。

 

GDVは緊急疾患のため、病院としてもスピード勝負となります。

急に胃がねじれ、

胃にくっついている脾臓、腹部の大血管がまきこまれて虚血して

時間とともに致命的なダメージを負ってしまうのです。

 

診断後、すぐにガス抜きをして、

開腹下でねじれを修正し、

再発することがないように、

胃と腹壁を固定します。

 

もし迅速に手術まで乗り越えてくれたとしても、

組織の壊死、再還流障害などの問題があり、

術後の死亡率も高い恐ろしい病気です。

 

経験上、

ねじれを修正した後に、

血流が戻り組織の色が良くなる症例は予後が良いようですが、

発症後の時間経過が長かったり、

ねじれの角度が大きく、

修正後も濃い紫色から色が戻らない症例は予後が悪いと思われます。

 

 

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緊急疾患であるGDVの治療で重要なことは、

常に第1発見者であるはずのオーナー様にこの病気のことをよく知っていただき、

食後数時間で急に様子がおかしくなったら

すぐにホームドクターに問い合わせていただくことです。

 

ただし、食後数時間で発症した場合、

ホームドクターが休診時間である場合も多いので、

万が一のために、夜間救急への連絡先を控えておいていただくことも重要です。