ペットの病気・気になる症状

アレルギー性皮膚炎について

犬・猫・ウサギなど動物の皮膚は、つまむとよく動きます。

これは、ヒトと比較して皮膚が薄くデリケートで、

その下の筋肉との結びつきが弱いためです。

皮膚は体にとって細菌など異物を防ぐバリアとなる作用があります。

つまり動物はバリアが薄いため皮膚病になりやすいと言えます。

 

皮膚は直接見ることができる臓器であり、

皮疹は疾患の結果を表現しています。

皮疹を読み解くには知識経験が必要であり、

探偵のような洞察眼問診が必要です。

 

皮膚病の原因として多くみられるのはアレルギーです。

アレルギーの原因には、

  • ハウスダストや花粉などが原因となるアトピー
  • たべものが原因となる食物アレルギー
  • ノミの唾液などが原因となるノミアレルギーなど、様々あります。

 

これらは体質の問題なので根治は困難ですが、ほうっておくと、

強いかゆみはストレスとなり、食欲や元気など一般状態にも影響を及ぼします。

よって、アレルギー性皮膚炎の治療目的は、

今ある100%のかゆみを、50%にしてあげること

つまり、体質の問題なので治すのは難しいため、

かゆみをストレスを感じない程度に抑えてあげることが目的となります。

 

アレルギー性皮膚炎の発症の原因には、

ひとつのアレルゲンだけが関与していることは少ないです。

複数のアレルゲンが重なり、それらが自分の許容量を超えることでかゆみが出てきます。

しかも、汚れた手や口でかきむしるので、感染症を併発していることも多々あります。

(初診時には大半が自己損傷か二次感染を起こしています。)

かゆみを抑えるには、それらさまざまな要因について、可能な限り除去し、

自分の許容量を超えないようにすることです。

 

ステロイドは、アレルギーに対し有効ですが、

根本解決にはなりません。

ステロイドだけで漫然と治療を行うことは、

副作用の点からもあまり良くありません。

シャンプー、保湿、ブラッシングなどでスキンケアを行い、

免疫抑制剤やインターフェロン注射によって免疫を調整したり、

かゆみの基となるヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン剤、

皮膚のバリアを強化するサプリメントやフードを併用することで、

ステロイドの量を減らすことが肝心です。

 

アレルギーをもつ動物の管理をするうえで重要なことは、

その子の体質と誠実に向き合い、病気と上手くつきあっていくことです。

 

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以下に当院で用いているアトピー性皮膚炎の

診断基準(Veterinary Dermatology, 2010) を記載します。

1. 初発年齢が3才未満
2. 飼育環境のほとんどが室内
3. ステロイドによって痒みがおさまる
4. 慢性的あるいは再発性のマラセチア感染症
5. 前肢に皮膚病変が認められる
6. 耳介に皮膚病変が認められる
7. 耳の辺縁には皮膚病変が無い
8. 腰背部には皮膚病変が無い

まずは感染症を除外し、

ノミ予防をしており、

食物アレルギーの可能性が低い

もしくは食物除去試験に反応しない症例で、

これら8つの項目を5つ以上満たすと、

アトピー性皮膚炎の可能性が高いと判断しています。

(感度・特異度ともに80%程度)

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