ペットの病気・気になる症状

全身麻酔の注意点②【術中モニター】

 

 

 

それでは麻酔シリーズの第2回目です。

 

 

 

 

全身麻酔中には、

生体情報モニター」と呼ばれる医療機器で

全身状態のモニタリングを行います。

もちろん、麻酔中の患者様の状態を把握するためです。

 

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この医療機器に、

患者様の呼吸状態循環動態麻酔深度などの情報が示されます。

そのデータを参考にして、

点滴や麻酔薬などを調節しながら

なるべく正常な状態に近くもっていくわけです。

 

 

 

これがないと、

知らない間に麻酔が効きすぎたりして

患者様が危険にさらされている

ということも起こり得ります。

 

 

 

 

 

安全な全身麻酔のためには欠かせない医療機器です。

 

 

全身麻酔の注意点①【鎮痛という考え方】

外科手術において、全身麻酔はなくてはならないものです。

しかし、高齢や、全身疾患を抱えている動物では、なるべくかけたくないもの。

僕だってそうです。

 

でも、詳しいことは知らず、

ただなんとなく『全身麻酔』というだけで怖がっている方、

いらっしゃいませんか?

少なくとも、僕が対応させていただいているオーナー様の中には

それなりにいらっしゃるように感じております。

 

そこで今回から、

僕も含めたみんなが恐れる全身麻酔について、

理解を深めるためにお話ししていこうと思います。

(以前にコラム『麻酔は怖い?』でも書いています)

 

まずは、【鎮痛という考え方】についてです。

 

 

 

 

 

当院では、

【イソフルラン】という吸入麻酔薬を術中メインに使用することが多いですが、

これは大脳皮質を抑制するため、

動物を手術中、動かなくさせることは問題ありません。

 

しかし、痛みに対する全身の反応は十分に抑制することはできません。

(侵害刺激に対するセキズイや視床への神経伝達→交感神経および神経内分泌の反応)

 

そのため、痛いことをすると全身麻酔下でも体がピクピク動くことがあるのです。

 

そこで、動くから術中危ないといって、全身麻酔薬の量を増やしても、

麻酔の副作用である循環抑制(心拍数減少・血圧低下)なども強く出てしまい、

結果、術中・術後の循環不全のリスクが高まってしまうだけ・・・。

 

また、痛みはコルチゾール分泌や高血糖などを誘導することから、

免疫低下による感染治癒遅延などのリスクも増大します。

 

当然、万人が『痛いのはイヤ』なのですが、

実はそれだけではなく、

痛みは色々治りを悪くするんですね。

 

 

 

 

 

そこで、【鎮痛】という考え方が必要になってきます。

 

当院では、その手術の予想される痛みによって、

複数の鎮痛組み合わせて使用しています。

これを【マルチモーダル鎮痛】といいます。

 

強力な鎮痛剤のなかには、

今世間をにぎわせている「麻薬」に指定されているものもありますが、

安全な麻酔のためには必須の考え方であります。

 

鎮痛をうまく使いこなせれば、

全身麻酔薬の量を、

なんと

半分以下まで落とすことも可能なのです!!

 

 

 

 

内容が難しくなってしまいましたが、

これでも、実はかいつまんでお話ししているところです。

 

 

 

 

 

今回からシリーズで書いていきますが、

わかっていただきたい点は、

麻酔は奥が深く

落とし穴を踏まなければ、

それほど危険なものでもない

ということをご理解いただければ、

これ以上のことはありません。

内視鏡検査とは?

当院では、

なかなか治らない下痢や嘔吐などの

慢性消化器疾患のどうぶつに

内視鏡検査が可能です。

 

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「内視鏡検査」という言葉にはあまり馴染みがないのか、

漢字からも内容がわかりづらいのですが、

 

(なかを)

(みる)

(スコープ)

 

ということですね。

 

「胃カメラ検査」

 

というと

 

「ああ!」

 

と、ご理解いただける場合も。

 

 

 

この「胃カメラ検査」ですが、

 

全身麻酔をかけないとできない

 

のが最大のネックとなり、

こちらが勧めても、

 

「したくない」

 

と断られることも多いです…。

 

 

 

しかし、この「胃カメラ検査」

よく考えてみてください。

 

ヒト医療では全身麻酔がいらないにしても、

かなり一般的に行われています。

 

人間ドックの1項目としても行われるくらいです。

 

 

 

ということは、

かなり重要な検査だということです。

それなのに、

どうぶつ医療においては

日常的に行われる検査ではありません。

 

 

 

 

別の用途になりますが、異物はよくとります。

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どうぶつでは、どうもこちらのイメージが強いようですね。

 

 

 

 

しかし、内視鏡は本来の用途は【検査】です。

 

 

食道〜胃〜小腸

また

大腸

 

といった口から肛門までの消化管の内部を目視でき、

怪しい場所から組織を採取して調べることも可能です。

 

こういった一連の検査は、

潰瘍・炎症・腫瘍・ポリープなどの診断に大きく貢献します。

 

 

 

 

最近では、

直腸に腫瘍のあるわんちゃんに

下部消化管内視鏡検査(大腸鏡検査)を行いました。

 

これはお尻から内視鏡を入れる検査です。

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中央やや下に見えるのが直腸腫瘍です。

 

 

結果的に手術計画の立案に大きく貢献し、

手術は無事、計画通りに終えることができました。

 

 

 

 

このように、メリットの大きい検査です。

 

 

 

確かに全身麻酔下でないとできないので、

血液検査やエコー検査のように

気軽にできる検査ではないですが、

「早くやってたら良かった」

と思うような恐ろしい病気が見つかることもあります。

 

当院では、そういった理由から、

リスクを感じた際は積極的に勧めるようにしております。

イヌの緑内障について

こんにちは。

獣医師の中です。

 

最近暑い日が続きますね。

この仕事をしていると、

あまり日中外に出る機会はないですが、

子供を連れて虫やサワガニ取りに出かけたときなんかに

あらためて夏を感じることが多いです。

 

皆様、くれぐれも

アウトドアでの熱中症には気をつけてくださいね。

 

 

 

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今回のコラムは何にしよう…。

と思っていたら、

ここ最近で

緑内障のワンちゃんを連続で診察する機会がありました。

 

 

緑内障とは、

目の水分がなんらかの原因でたまり、

目が腫れてしまう病気です。

 

 

緑内障は眼圧が高くなるので

診断自体は容易です。

 

 

この機械でポチっとして眼圧を計るだけです。

おとなしい子であれば一瞬で終わります。

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「じゃあ何で緑内障になるんだ」 

 

っていう原因についてはたくさん考えられるので、

それ以外にも

色んな検査をしないといけない訳ですが…。

 

 

 

緑内障は外観も特徴的で、

散瞳といって瞳孔が開くので、

名前の通り目の奥が(青っぽく)に見えます。

また、白目の部分は真っ赤に充血します。

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人間では、頭痛などの症状で、比較的早期に発見できるのですが、

どうぶつでは、発見された時は経過が長いことが多いです。

高眼圧が持続して網膜がやられ、

すでに失明している場合もあります。

 

 

 

治療としては、以下の2つに分けられます。

 

◯視力が残っている場合

・・・目薬や麻酔下の処置で眼圧をコントロールします。

 

◯視力がもはや残っていない場合

・・・義眼や眼球摘出などの外科手術を検討します。

 

 

目薬はかなり高価であり、

簡単にさせてくれない子も多く、

発見時には視力があっても

結局は失明に至ることが多いです。

 

 

獣医師・オーナー様を悩ませる、

治療が難しい病気のひとつですね。

「てんかん」ってどんな病気?

人間でも多い「てんかん」

実は犬にも多く、全体の約1%はてんかん持ちといわれています。

 

 

当院のペットホテルでも、

「てんかんのお薬飲んでるから、動物病院のホテルが安心」

という目的でご利用されている患者様が数人いらっしゃいます。

 

 

てんかんとは、ケイレンなどの発作を引き起こす病気の総称です。

発作の内容は様々ですが、意識がない発作は重症度が高いです。

特に溺れるような発作は亡くなる可能性もあります。

 

 

まず獣医師は、

発作の稟告を受けると、

頭の中で分類をします。

 

 

どんな発作なのか

発作前・後の様子は

その時間は

初発だけなのか

2回以上繰り返しているのか

その頻度は

etc

 

 

 

 

2回以上発作を繰り返す症例に対しては、

原因を追求する必要があります。

 

 

 

 

当院では特発性、つまり原因がよくわからない「てんかん」が多いです。

他にも、脳腫瘍や、脳炎から発作を起こす患者様がいらっしゃいます。

意外にも、

頭以外、

実はお腹の内臓や中毒なんかが原因だった!

というケースもあるため、

血液検査など色々検査しなくてはいけません。

色々検査した結果、

なにもなく、

MRIまで撮像し、本当にな〜んにも病変部が見つからなければ

「特発性てんかん」

となります。

 

 

 

 

治療法は、

原因がわかればそれに対処し、

わからない、または対応のしようがない場合は

発作を抑える抗てんかん薬を飲み続けることになります。

当院では、だいたい月1回の頻度を目安に、それ以上の発作があればお薬を出すようにしています。

(それ以外にも、進行が認められる場合や重い発作を起こす場合は薬を始めていきます)

 

 

 

 

お薬にも副作用があるため、

 

発作を0にする

ということは治療の目的とせず、

 

発作の頻度をしんどくないレベルまで減らす

ということが目的となります。

 

 

 

縁起でもありませんが、

もし自分の愛犬に発作が起こった場合、

あせらずに(というのは無理かもしれませんが)

主治医の連絡先を確認し、

発作が続いた時間や意識があったかどうかなど、

事細かに記録するようにして、

主治医に報告するようにしてください。

 

 

ペンペンたたいたりしてはいけませんよ。

 

 

※10分以上発作が続く場合は速やかに救急へ。