人に不治の病があるように、
猫にも不治の病と呼ばれているものがあります。
そのうちのひとつ。
『FIP』をご存知でしょうか。
和訳すると猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis;FIP)といいます。
「伝染性」とありますが、他猫にうつることはありません。
猫の約80%が 感染していると言われている猫腸コロナウイルスの変異型であり、
現在の抗体検査、 遺伝子検査の精度ではコロナウイルスと区別がつきませんが、
腸以外の場所からコロナウイルスが検出されると確定診断となります。
有効な治療法は現在のところありません。
たちのわるいことに、子猫もたくさんかかるため、若い命を散らすことも多々あります。
『不治の病』を診断するとき、獣医師としては得もいえぬ無力感にさいなまれます。
苦しむ患者さんに何もできない無力感。
「なんのための獣医師だ」「なんのために獣医学を勉強してきたんだ」
昔は不治の病であった『がん』も今は治る病気になってきています。
世界中の獣医学に精通した有能な研究者たちが解明を急いでいます。
町医者としては、犬猫のパルボウイルスのように、効果的な治療法が見つかるのを祈るばかりです。