老化は、生物にとって避けることができない現象です。
獣医学の発展とともに、ヒト同様、がんや心臓病などを診る機会が増えています。
また、これもヒト同様、高齢動物の介護ケアが問題になっています。
老化の速度には個体差があり、数値化できるようなものではありません。
「何歳からが高齢なのか」を定義することは難しいと思われます。
しかし、主観的ではありますが、年齢の目安としては、
ある程度の判断材料があったほうが良いと思われます。
加齢による身体の変化には、例として以下のものがあります。
①基礎代謝量が低下する。(太りやすくなる)(甲状腺機能亢進症など例外を除く)
②感覚機能の低下。(視力や聴力などの衰え)
③脳の老化。(認知症様の症状や寝る時間が増えるなど)
④各臓器の老化。(代表例は腎臓・肝臓・心臓)
⑤筋肉量・活動量の低下。(①につながり悪循環に)
⑥免疫機能の低下。(特に細胞性免疫)
これらの変化を検出するには、特に血液検査
(CBC、腎パネル、肝パネル、血糖値、脂質、アルブミン、電解質)
レントゲン検査
尿検査
などが重要になってきます。
そして、自然の摂理として、誰にも平等に「死」は訪れます。
高齢動物に必要なのは、
QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の維持を目的とした治療。
たとえ、根治治療が困難であっても、緩和治療により、
動物が苦痛から解放され、
少しでも長く、苦痛の少ない状態で、オーナー様とともに時間を過ごし、
終末期を迎えることができる。
そのような治療が理想ではないかと思います。
介護などの在宅ケアは、肉体的にも精神的にも非常に負担が生じます。
しかし、可能な限り自宅にて看取ってもらうことで、
オーナー様自身のペットロスを和らげることができます。
実際に、後日談において、
「あの時は本当に大変であったが、最後まで看取ってあげることができ良かった。」
そう話していただけるオーナー様は多い。
病院のスタッフとオーナー様との信頼関係のもと、しっかり話し合い、みなで考え、
死から目を背けずに、一緒になって治療していくことが重要となります。