ペットの病気・気になる症状

獣医師と患者との関係性

何度かそれっぽいことをブログなどで発言していますが、

今回、コラムにてまとめさせていただきます。

 

当院では、慢性疾患に対するセカンドオピニオンのご相談が比較的多くあり、

これも医療の難しさと捉え、日々勉強させていただいております。

ところで、なぜオーナー様は、転院を考えるのでしょうか。

 

よくあるのは、

治療内容を把握していない。

どういう病気か詳しくわからない。

けれども、お医者さんがいうからお薬をあげている。

その他に選択肢がない。

その結果、治らない。

転院を考える。

というもの。

治療計画をご理解いただけていない場合、

オーナー様は、先が見えないまっ暗なトンネルでさまよっているような気分になります。

この現象は特に、

一方的に説明を聞き、言う通りにしている

そういったオーナー様に多いようです。

 

獣医師」と「患者」の関係は、各病院の診療方針によって変化します。

それは、上記のように会話を獣医師が支配し、患者側には選択肢のない

保護監督者」のような関係であったり。

獣医師は医学的情報を提供し、患者には選択肢が与えられ、ともに協力して意思決定を行う

協力者」の関係であったりします。

自分自身が患者の立場となって考えたとき、後者の関係性であってほしいと願うことから、

当院では獣医師はあくまで患者側とは対等の立場で、

ともに考えながら治療にあたりたいと考えております。

加えてオーナー様との、つまり人と人との信頼関係の構築を重視しております。

実際に患者に対し投薬や管理などを行うのはオーナー様です。

そのため、最善と考える医療には、パートナーシップが重要であり、

オーナー様の医療への積極的な協力が必要不可欠となるからです。

 

あくまで、医療とは、患者が治る手助けをするものであり、

実際に患者を治すのは、免疫力、食欲、精神力や環境、周りの支えなどを含めた

患者自身の「生きようとする力」が大きいものと思います。

特に、小児科でよくいわれることでありますが、

動物(子供)にとっての主治医は、我々ではなくオーナー様(保護者)です。

 

昨今では、医療現場ではアドヒアランスという言葉がよく用いられますが、

これは、

患者自身が病態について理解し、治療の必要性を感じて、積極的に取り組むこと

です。

特に、糖尿病など、治療が長期に及ぶ慢性疾患において、このことはきわめて重要となります。

 

動物病院との関係性が合わないオーナー様は転院を考え始めるのだと思います。

もちろん、治療計画がうまくいっていないことが背景としてあるのでしょう。

「転院」という言い方が、裏切りやドクターショッピングなど

ネガティブな連想をさせるのかもしれません。

その点、セカンドオピニオンという言葉は受け入られやすいのでしょうか。

重要なのは、「価値観は人によって違う」ということです。

万人に合う病院、施設は存在しません。

 

私たちは、これが正しいと決めつけず、じっくり話をして、ともに歩み寄り、

なるべく価値観と目的を共有するようにして治療を進めていきたいと考えています。