ペットの病気・気になる症状

整形外科について

よく、ご相談を受けるのが、「骨折は対応していますか」というもの。

 

私は、学生時代の研究内容が硝子軟骨の再生についてであったため、

大学の先輩や神戸大の医学部整形外科にご指導いただきながら研究に励んでまいりました。

また、その関係からか、大学病院でもそういった手術の助手などを経験してきました。

 

面白い事に、学生時代に研究してきた事は、その獣医師の好きな分野になることが多いです。

私も同様に、整形外科に興味をもち、色々勉強しました。

 

しかし、勉強すればするほど、考えることがありました。

 

 

人間の病院でも、整形外科というのは特に技術が問われます。

〜科〜科と科目が分かれている人医療でも、難しい技術なのです。

ひとつとして同じ折れ方、場所、治り方をする骨折はないため、

プレート、創外固定、ピン、ワイヤーなど、手術方法も様々。

この判断には、経験が必要です。

毎日コンスタントに何例も手術を経験しないと習得できないような職人技。

仮に才能があり、本格的に学んだとしても、ある程度習得できるのは何年も先の話です。

しかも、この分野の手術は失敗すると、あとあと後遺症が残る可能性があります。

ならば、中途半端に手を出すのはダメ。本格的にやるのかどうか・・・。

もともと早期の開業を視野に入れていたため、とても悩みました。

 

そこで、以前の勤務先では、外固定リハビリテーションに絞り勉強しました。

 

難しい手術は、専門医にお願いし、術後管理を近所の病院でできれば、

オーナー様の負担は減らせるし、症例の治る可能性も高める事ができる。

 

結論として、そう考えました。

 

同様の事は、眼科、胸部外科、脳神経外科などでも言えると思います。

 

難しい専門の技術と経験を要する手術は、上手い先生にお任せし、

希望であれば、当院で術後管理を受けれるようにすればいい。

そう考えています。

 

できないことを、できないと認め、「できない」と言う。

「できる」という発言には、最後まで責任を取る覚悟が必要。

結果として患者側にとって最良の形がとれればよい。

 

最後には、すべての獣医師がもっているであろう仁術としての心、

「動物とオーナー様を助けたい」という思いが大事なのだと思っています。

 

 

当院は、「骨折は対応していますか」という質問には、こう答えています。

 

「残念ながら、当院では骨折の手術ができません。

しかし、確かな技術を持つ専門の動物病院をご紹介することはできます。

術後のご相談などはご希望でしたら当院で対応することが可能です。

この子が治るまでは、オーナー様が迷わないよう、

最後まで責任を持って対応させていただきます。」

恐ろしい病気~膵炎~

最近、立て続けに膵炎(すいえん)の患者様が来院されます。

 

膵炎といえば、チュートリアルの福田さんや中川家の剛さんなど、

多数の芸能人が罹患しニュースになることがあるため

知っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

動物でも人と同様に、膵炎はあります。

症状は、下痢や嘔吐などの消化器症状など。

特徴的なのは、背中に近い腹痛のため、

椎間板ヘルニアなんかとよく似た激しい痛みの症状を示します。

背中を丸めてじっとしていたり、抱くとキャンと鳴いたりします。

「祈りの姿勢」といって、お尻を後方に突き出してひれ伏すような姿勢をとることもあります。

重症例、進行例では、命に関わることも多い恐ろしい病気のため、

ご自宅でこのような様子を見かけたら早急にホームドクターに相談してください。

 

膵臓

膵臓とは、胃の裏側にへばりついている臓器であり、

その主な機能のひとつが、

体の消化機能の大半を占める消化液、「膵液」を分泌することです。

「膵液」は食べ物の三大栄養素である、

「炭水化物」「脂質」「タンパク質」をすべて溶かすことができます

まさに、最強の消化液です。

 

では、なぜ、膵臓は自分自身を溶かさないのでしょうか。

実は膵液は、膵臓の中では機能を持たず、

十二指腸に分泌されて活性化し、はじめて機能を持ちます。

膵炎になると、この順番が何らかの原因でうまくいかず、

膵臓の中で活性化してしまい自己消化が起こります。

体の中がドロドロに溶けていくのです。

 

治療法は、直接劇的に効果のあるものはなく、点滴に頼ることになります。

軽症例では、通院下で皮下点滴のため通っていただく場合もありますが、

重症例では、入院下での静脈点滴は必須です。

炎症の悪循環を絶たなければいけません。

治療が長期に渡ることも多いです。

 

また一度溶けた膵臓はもろくなるため、再発が多いのもこの病気の特徴です。

 

まさに、一筋縄ではいかない病気であることがおわかりいただけたでしょうか。

 

特定の犬種、人間の食べ物、高脂肪食、肥満やストレスが危険因子となりますので、

これらにあてはまる場合には、特に注意が必要です。

適応外処方について

適応外処方とは、医薬品を承認内容に含まれない目的で使用することです。

人医療においては、保険適応であるかそうでないかが重要になってくるようです。

獣医療においては、公的に保険制度がなく、

病気ごとのお薬の保険適応は細かく定められていないため、

いずれ保険関連の大きなトラブルが起こるような気がします。

 

お薬を仕入れると、必ず添付文書という取扱説明書のようなものが付きます。

イクセロンパッチ

それは製薬会社が研究により、

適切な体重あたりの投与法や安全性、禁忌などを調査し記載したもので、

その記載にない処方は、獣医師の自己責任となります。

 

獣医療において、

人間用の薬剤を処方する場合や、

動物種において適応外である薬剤を処方することは多々あります。

これは、動物用医薬品の価格の高さ、流通・種類の少なさから仕方ありません。

そういった場合、薬剤を分割したり、粉砕したり、海外から取り寄せたりします。

それらは全て、獣医師の自己責任による処方となりますので、

万が一に関して、オーナー様に十分に説明しておく必要があります。

 

動物は人間にくらべ、サイズが小さいだけに、大変です。