ペットの病気・気になる症状

猫に厳しい季節~特発性膀胱炎とは~

寒い時期は、猫の患者が多く来院されます。

そのうち多くは、排尿困難・血尿・頻尿・そそうなどの尿に関するトラブルです。

この時期は、水を飲まなくなるため尿が濃くなり、また運動量も少なくなるため

膀胱炎のリスクが上がります。

 

ところで、猫には、特発性膀胱炎という病気が有名です。

ん?特発性ってなんだろう?わかりにくいですよね。

よく特発性てんかんなど他の病気でも用いられる「特発性」という名前の定義は、

これといった原因のない」という意味です。

特発性の病気は、「除外診断」によって診断します。

どんな原因もあてはまらなくなるまで検査したのち、

最後に残った病名として使うことが多いです。

犬では、結石症や細菌感染が膀胱炎の主な原因であったりするのですが、

猫では、「これといった原因のない膀胱炎」が

膀胱炎の約半数~2/3を占めているといわれています。

 

img67499503ヒルズ・コルゲート社より

 

当院では、まず一般身体検査にて膀胱を念入りに触診し、尿道が詰まってないか調べます。

その後レントゲン検査と尿検査を行い、結石症と細菌感染を除外します。

(特に早期に去勢されたオスは陰部が小さいため、結石などが尿道に詰まりやすく危険です)

本当はもっと検査しないといけないのですが、猫の膀胱炎の大半はこの病気のため、

ひとまずは「」診断として治療を開始することが多いです。

 

「特発性膀胱炎」の根本的な原因はいまだ明らかではないですが、

交感神経系~副腎皮質機能、つまり「神経原性=ストレス」が一因といわれています。

また、膀胱炎のリスク要因としては、

  • 長毛
  • 肥満
  • 水分摂取量が少ない
  • 運動不足
  • 多頭飼育
  • 性格(怖がり・神経質)
  • 環境の変化

などが挙げられますので、これらに注意が必要です。

 

ならない、また再発しないための対策としては、

  • 太らせすぎない
  • きれいなトイレを用意する(猫の数+1個以上)
  • 邪魔されずに食事や睡眠がとれること
  • 水分量の多いフード
  • 様々なかたちの給水装置
  • 避妊・去勢を行うこと
  • フェロモン剤の使用
  • 野生本能(登る、隠れる、爪とぎ、狩猟など)を満たすことができる環境づくり

などが挙げられます。

 

こういった猫にとってストレスの多い状況と、不十分な環境要因は、

ほとんどの猫のいるご家庭に存在するといわれています。

ストレス社会は、人間のみならず動物にもあてはまるのですね。

獣医師と患者との関係性

何度かそれっぽいことをブログなどで発言していますが、

今回、コラムにてまとめさせていただきます。

 

当院では、慢性疾患に対するセカンドオピニオンのご相談が比較的多くあり、

これも医療の難しさと捉え、日々勉強させていただいております。

ところで、なぜオーナー様は、転院を考えるのでしょうか。

 

よくあるのは、

治療内容を把握していない。

どういう病気か詳しくわからない。

けれども、お医者さんがいうからお薬をあげている。

その他に選択肢がない。

その結果、治らない。

転院を考える。

というもの。

治療計画をご理解いただけていない場合、

オーナー様は、先が見えないまっ暗なトンネルでさまよっているような気分になります。

この現象は特に、

一方的に説明を聞き、言う通りにしている

そういったオーナー様に多いようです。

 

獣医師」と「患者」の関係は、各病院の診療方針によって変化します。

それは、上記のように会話を獣医師が支配し、患者側には選択肢のない

保護監督者」のような関係であったり。

獣医師は医学的情報を提供し、患者には選択肢が与えられ、ともに協力して意思決定を行う

協力者」の関係であったりします。

自分自身が患者の立場となって考えたとき、後者の関係性であってほしいと願うことから、

当院では獣医師はあくまで患者側とは対等の立場で、

ともに考えながら治療にあたりたいと考えております。

加えてオーナー様との、つまり人と人との信頼関係の構築を重視しております。

実際に患者に対し投薬や管理などを行うのはオーナー様です。

そのため、最善と考える医療には、パートナーシップが重要であり、

オーナー様の医療への積極的な協力が必要不可欠となるからです。

 

あくまで、医療とは、患者が治る手助けをするものであり、

実際に患者を治すのは、免疫力、食欲、精神力や環境、周りの支えなどを含めた

患者自身の「生きようとする力」が大きいものと思います。

特に、小児科でよくいわれることでありますが、

動物(子供)にとっての主治医は、我々ではなくオーナー様(保護者)です。

 

昨今では、医療現場ではアドヒアランスという言葉がよく用いられますが、

これは、

患者自身が病態について理解し、治療の必要性を感じて、積極的に取り組むこと

です。

特に、糖尿病など、治療が長期に及ぶ慢性疾患において、このことはきわめて重要となります。

 

動物病院との関係性が合わないオーナー様は転院を考え始めるのだと思います。

もちろん、治療計画がうまくいっていないことが背景としてあるのでしょう。

「転院」という言い方が、裏切りやドクターショッピングなど

ネガティブな連想をさせるのかもしれません。

その点、セカンドオピニオンという言葉は受け入られやすいのでしょうか。

重要なのは、「価値観は人によって違う」ということです。

万人に合う病院、施設は存在しません。

 

私たちは、これが正しいと決めつけず、じっくり話をして、ともに歩み寄り、

なるべく価値観と目的を共有するようにして治療を進めていきたいと考えています。