寒い時期は、猫の患者が多く来院されます。
そのうち多くは、排尿困難・血尿・頻尿・そそうなどの尿に関するトラブルです。
この時期は、水を飲まなくなるため尿が濃くなり、また運動量も少なくなるため
膀胱炎のリスクが上がります。
ところで、猫には、「特発性膀胱炎」という病気が有名です。
ん?特発性ってなんだろう?わかりにくいですよね。
よく特発性てんかんなど他の病気でも用いられる「特発性」という名前の定義は、
「これといった原因のない」という意味です。
特発性の病気は、「除外診断」によって診断します。
どんな原因もあてはまらなくなるまで検査したのち、
最後に残った病名として使うことが多いです。
犬では、結石症や細菌感染が膀胱炎の主な原因であったりするのですが、
猫では、「これといった原因のない膀胱炎」が
膀胱炎の約半数~2/3を占めているといわれています。
当院では、まず一般身体検査にて膀胱を念入りに触診し、尿道が詰まってないか調べます。
その後レントゲン検査と尿検査を行い、結石症と細菌感染を除外します。
(特に早期に去勢されたオスは陰部が小さいため、結石などが尿道に詰まりやすく危険です)
本当はもっと検査しないといけないのですが、猫の膀胱炎の大半はこの病気のため、
ひとまずは「仮」診断として治療を開始することが多いです。
「特発性膀胱炎」の根本的な原因はいまだ明らかではないですが、
交感神経系~副腎皮質機能、つまり「神経原性=ストレス」が一因といわれています。
また、膀胱炎のリスク要因としては、
- 長毛
- 肥満
- 水分摂取量が少ない
- 運動不足
- 多頭飼育
- 性格(怖がり・神経質)
- 環境の変化
などが挙げられますので、これらに注意が必要です。
ならない、また再発しないための対策としては、
- 太らせすぎない
- きれいなトイレを用意する(猫の数+1個以上)
- 邪魔されずに食事や睡眠がとれること
- 水分量の多いフード
- 様々なかたちの給水装置
- 避妊・去勢を行うこと
- フェロモン剤の使用
- 野生本能(登る、隠れる、爪とぎ、狩猟など)を満たすことができる環境づくり
などが挙げられます。
こういった猫にとってストレスの多い状況と、不十分な環境要因は、
ほとんどの猫のいるご家庭に存在するといわれています。
ストレス社会は、人間のみならず動物にもあてはまるのですね。