僕は、何かにつけてエビデンスエビデンス言ってくる、いわゆるエビデンス厨の方が苦手です。
エビデンスとは、論文やら研究やらで示される物事の「根拠」のことですね。
教科書というものはエビデンスを基に作られています。
教科書にはエビデンスのない個人的な意見を書いてはいけません。
そういった意味では世界を作る大事なものです。
医学において、10年前のエビデンスは最新の知見とはまったく異なるものになるので、
知らず知らずのうちに間違った医療をしてしまっていることも。
そういうわけで医療従事者は常にエビデンスを確認する姿勢が必要になるわけです。
「エビデンス厨が嫌い」発言によって誤解を招きたくないのですが、
当院での3つの診療方針のうちのひとつは
①「科学的根拠(エビデンス)に基づいた医療の提供」
なので、エビデンスや教科書に基づいた一般的な治療のプロセスが重要じゃないと言っているわけではありません。
むしろそれは超重要だと思っています。
ただ、
医療ってエビデンスが全てじゃないだろってことです。
これは診療方針のふたつめ
②「飼い主さんの価値観に合わせた医療の提供」
に繋がってきます。
飼い主さんやどうぶつは十人十色なので、エビデンスだけじゃなくて【理想の医療】ってその人その人で形が違うでしょって話です。
この【理想の医療】は飼い主さんそれぞれとよくコミュニケーションをとり模索していくしかないのですが、
これが診療方針の最後のひとつ
③「インフォームドコンセント(説明と同意)を徹底する」
に繋がります。
きちんとメリットとデメリットを説明し、どれがその子にとっての【理想の医療】なのか一緒に考え、ご納得いただいた上で先に進むということです。
つまり、診療方針とは、飼い主さんとどうぶつに【理想の医療】を提供するための3つの柱のことなんですね。
僕らはプロフェッショナルとして知識と技術を提供しますが、ずっと一緒に暮らしてきた飼い主さんとどうぶつとの家族の絆のど真ん中には割り込めません。
その子とずっと暮らしていたのは飼い主さん。
そしてその後も一生涯思い続けるのは飼い主さん。
なので
一般的な理論を踏まえた上で、飼い主さんが理想だと考えた医療が、当院における【理想の医療】なのだと思います。
「エビデンスエビデンス言うなし!頭かてーな!」ということですね。
このことは、新人さんが入ってくるとまずは説明するのですが、
意外と診療方針があることすら知らない人が多いと思うので今回説明してみました。
さりげなく 診療方針 ずっとある