ペットの病気・気になる症状

全身麻酔の注意点①【鎮痛という考え方】

外科手術において、全身麻酔はなくてはならないものです。

しかし、高齢や、全身疾患を抱えている動物では、なるべくかけたくないもの。

僕だってそうです。

 

でも、詳しいことは知らず、

ただなんとなく『全身麻酔』というだけで怖がっている方、

いらっしゃいませんか?

少なくとも、僕が対応させていただいているオーナー様の中には

それなりにいらっしゃるように感じております。

 

そこで今回から、

僕も含めたみんなが恐れる全身麻酔について、

理解を深めるためにお話ししていこうと思います。

(以前にコラム『麻酔は怖い?』でも書いています)

 

まずは、【鎮痛という考え方】についてです。

 

 

 

 

 

当院では、

【イソフルラン】という吸入麻酔薬を術中メインに使用することが多いですが、

これは大脳皮質を抑制するため、

動物を手術中、動かなくさせることは問題ありません。

 

しかし、痛みに対する全身の反応は十分に抑制することはできません。

(侵害刺激に対するセキズイや視床への神経伝達→交感神経および神経内分泌の反応)

 

そのため、痛いことをすると全身麻酔下でも体がピクピク動くことがあるのです。

 

そこで、動くから術中危ないといって、全身麻酔薬の量を増やしても、

麻酔の副作用である循環抑制(心拍数減少・血圧低下)なども強く出てしまい、

結果、術中・術後の循環不全のリスクが高まってしまうだけ・・・。

 

また、痛みはコルチゾール分泌や高血糖などを誘導することから、

免疫低下による感染治癒遅延などのリスクも増大します。

 

当然、万人が『痛いのはイヤ』なのですが、

実はそれだけではなく、

痛みは色々治りを悪くするんですね。

 

 

 

 

 

そこで、【鎮痛】という考え方が必要になってきます。

 

当院では、その手術の予想される痛みによって、

複数の鎮痛組み合わせて使用しています。

これを【マルチモーダル鎮痛】といいます。

 

強力な鎮痛剤のなかには、

今世間をにぎわせている「麻薬」に指定されているものもありますが、

安全な麻酔のためには必須の考え方であります。

 

鎮痛をうまく使いこなせれば、

全身麻酔薬の量を、

なんと

半分以下まで落とすことも可能なのです!!

 

 

 

 

内容が難しくなってしまいましたが、

これでも、実はかいつまんでお話ししているところです。

 

 

 

 

 

今回からシリーズで書いていきますが、

わかっていただきたい点は、

麻酔は奥が深く

落とし穴を踏まなければ、

それほど危険なものでもない

ということをご理解いただければ、

これ以上のことはありません。