僕は、子供の頃、ブラックジャックが好きでした。
医師や、漫画家を志した時期もあるくらいです。
その主人公の天才的な外科手術の腕だけじゃなく、
その故手塚治虫先生の描く感動的な言葉の数々は、
僕の今の医療倫理に大きく影響しています。
僕は、人間の救急病院(医療事務)、大学病院、二次病院と勤めてきたのですが、
大きな病院ばかり経験してきたので、「生と死」は人一倍身近にありました。
その中で、数百万の費用を負担し、必死で我が子である愛犬を助けようとした人
仕事を辞め、腫瘍に侵された患者の介護に徹する道を選んだ人
色々な人がいて、色々な選択肢があり、色々な結末がありました。
その結果が、獣医師としての「負け」も多数あったように思います。
その選択が、正しかったのかどうかなんて言うつもりはありません。
そもそも、正解なんてないのかもしれません。
だからこそ、医者と患者の間には信頼感が必要であり、
理解し、納得するまで話し合うということが重要なのだと思います。
獣医師をしていると、診察を通して、
ペットと飼い主の背景にある家族のつながりを垣間見てしまう瞬間があります。
「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんておこがましいと思わんかね」
(「ブラックジャック」本間 丈太郎)
これは真理ですが、それでも、そんな時、僕はできるだけのことをしたかった。