病院ブログ

【院長】泊まりです。

初めての重症患者のねこちゃんの入院OLYMPUS DIGITAL CAMERA

集中管理により、現在は改善傾向です。

食欲も、怒る元気もでてきました。

明日の検査で、さらなる改善がみられるようなら

退院が見えてきます。

 

僕は、以前の勤務先で、夜間を担当していた時期がありました。

夜間診療には、色々な症例が来院されます。

今回は、そんな中、印象に残った出来事の話を。

 

ある日の深夜2時頃、シンと寝静まった病院内に

ドンドンと扉を叩く音が鳴り響きました。

 

出てみると、ご家族総出で来たと思われる3名の方が

息を切らせて病院のドアの前に立っていました。

習慣的に患者を探すと、手にはダンボール箱が。

中には、一頭の小柄なパピヨンがいました。

 

陣痛が始まって数時間たっているのに産まれない。

かかりつけは、連絡がつかない。

レントゲンで、4頭いるのは確認済みとのこと。

 

母犬の背後を確認すると、足だけ出ており、胴体が出ていない

いわゆる逆子による難産の状況でした。

 

首が圧迫されたこの状況が数時間続いていたとすると、命が危ない。

頭蓋骨が、骨盤腔より大きいのかもしれない。

帝王切開も視野に入れ、

すぐに診察台の上に乗せ、手に潤滑剤を塗り、助産を試みました。

 

幸いなことに、このときは用手法での救出に成功し、

「最初の一頭」以外は、すぐに正常に呼吸をしてくれました。

しかし、「最初の一頭」の呼吸が非常に弱い。

サイズも、「最初の一頭」だけが非常に大きく、そのために

産道を閉塞し、難産になってしまったものと考えられました。

 

ご家族の方には、「最初の一頭」は助からない可能性が非常に高く、

助かったとしても、低酸素状態が続いたことで、

後遺症が残る可能性があることを伝えました。

 

それから、一ヶ月ほどたちました。

そんなことがあったことも忘れるくらい、忙しい日々でした。

ある時、一通の手紙と、写真。あと、が、勤務先に届けられました。

 

手紙の内容は、あの「最初の一頭」のことでした。

なんと、一命をとりとめたばかりか

今では、兄弟の中で一番成長し、後遺症も残らずに

元気にしているとのことでした。

写真には、その無邪気な笑顔がうつっていました。

 

「最初の一頭」の生きようとする力に驚愕を覚えたこと。

生命の力強さ。

また、医師は、生き物の持ってうまれた運命を変える

とんでもない職業かも知れないと。

この出来事は、自分の生まれてきた意味を再確認する、

大きな出来事となりました。

 

夜間診療には、色々な症例が来院されます。

また、気が向いたらお話しします。

 

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これは、そのときにいただいたです。

なぜ、この本をプレゼントされたのかは、わかりません。

僕のような浅学非才の者には、

これでもっと勉強しろ、努力が足らない

との意味が込められていたのかも知れません。

これからも、目の前の動物を助けられるように日々精進します。

(ちなみに、この本は第一診察室においてあります)